最近、成田悠輔と言うイェール大学アシスタント・プロフェッサーとかで、テレビにもよく出ているという人の「高齢者は集団自決すれば良い」「最強のクールジャパンになる」という発言が批判を浴びたようである。
「僕はもう唯一の解決策ははっきりしていると思っていて、結局、高齢者の集団自決、集団切腹みたいなものではないかと……」「安楽死の解禁とか、将来的にあり得る話としては安楽死の強制みたいな話も議論に出てくると思う」などといった発言が、今年1月頃からネット上で拡散され、日本で炎上。その後、アメリカにまで伝わり『ニューヨーク・タイムズ』が「この上ないほど過激」と報道、海外でも物議を醸すこととなったという。
これを受けて日本では、「発言内容の全体を聞くと、納得できる部分はある」「表現は乱暴だが、見解はまとも」など成田氏の考えを支持する声も少なくなかったそうである。
高齢化が急速に進んで、現役世代の社会保障負担が重くなっている日本では今、「老害」への風当たりが非常に強くなっている。日本の一番の問題は、戦後の高度成長期の常識を背負ったままの古い考え方を持つ人たちが、政財界で大きな力を持ち続けていることにあると感じている人が多く、若者世代が貧しいのは、高齢者が社会の第一線に居座り続けているからだ、という「世代交代」を望む声も多いそうである。 経済的に困窮する若者に、社会保障費の現役世代負担が増え続けるしているなど問題も影響しているのであろう。
成田氏がが言いたいことは、
といった所であろうか。 成田氏が学者であり、彼が経営しているとされる「半熟仮想株式会社」が自治体データの利活用で、公的業務の枠組みで名前が出てくることもあり、知識人から「日本の未来のためだ」と説明されると、「そうだ、そうだ」と国民も納得しやすい面があるのであろうか。
「高齢者の集団自決」などあり得ないと笑う人もいるだろうが、日本の国は民主主義の社会になってから、「障害者への断種」を強いる悪法をつくった前科もあることを忘れてはならない。「尊厳死解禁」へ向けた議論が一気に進んでいく可能性もありうる話である。
この人はコロナについても、「コロナ対策は、ものすごいコストがかかる。これまで歴史上見たことのない規模のお金をドンドンと流しこんでいる。色々な対策をしなくてはいけないとなってくると、政府としても経済的なダメージを小さくしていきたい気持ちになるのもよく分かる」と言い、政府の本音(社会保障のお荷物である高齢者や病人を切り捨てるのにコロナは好都合)を代弁する役割を担ってると感じさせられると言う人もいる。
こう言った成田氏の発言に対して、「ひろゆき」氏として知られる西村博之氏は、この騒動について、15日にツイッターを更新し、「NYTimes東京支局の日本人が書いた記事で「成田先生が海外で炎上」みたいな流れを見ると、朝日新聞が従軍慰安婦のデマ記事を書いて海外で広まったのもこういうマッチポンプな流れだったんだろうなぁ、、、」と持論を展開。今回の騒動についても、「比喩で言った話が本気で言ったかのように伝言ゲームが始まってる状況」と綴って、成田市を擁護している。
しかし、この発言にネット上からは「さすがにこの擁護は無理ある」「たとえ比喩でも言ってはいけない」「実際言ってたんだから批判されるのは当然」「本人の発言でデマではない」「発言のまんまでしょ」などという苦言が集まっているとかである。
ひろゆき氏はネット上の匿名掲示板2チャンネルの創設者、2010年代後半からはユーチューバーとしても活動し、視聴者からの相談に応えるライブ配信番組を通じて人気を博し、ひろゆき氏として知られており、ビジネス書や自己啓発書なども出し、テレビにも出演するなど広く活躍、何処かの世論調査では次期総理大臣の第一候補にまで上がっている人気者だそうである。
そのひろゆき氏は沖縄での辺野古米軍基地反対での座り込み継続に対してSNS上でケチをつけて炎上したことでも有名である。
成田氏はユーチューブチャンネル「日経テレ東大学」にひろゆき氏とゲスト出演。チャンネルの生みの親である高橋弘樹氏から「集団自決、集団切腹」発言について、「あれってメタファー的な意味で解釈してるんですけど」と聞かれた際、成田氏はメタファーではないと否定。「切腹とかっていうのはメタファーというよりは、リアルにそれに近いことを考えていいんじゃないかという気がしますね」「メタファーでもなんでもなくて、すごいリアルな問題」と話していたそうである。
日本の年金制度が十分でなく、持続的でも健全でもないことは事実である。若者の「自分たちは年金がもらえなくなる」という不満や不安にも根拠がある。 しかし、その不満のぶつけ先が高齢者になるのは大きな間違いである。若者の不安につけこんで、意図的におかしなことを言って、あおる人たちがいる。
ここに至るまでの政策の問題をすべて飛ばして、現在の人口構造だけをクローズアップして高齢者を狙い撃ちしているのである。高齢者がいるから、自分たちの生活が苦しい、日本社会がダメになっているというような、非常に短絡的で残酷なことを言う成田氏のような「インフルエンサー」たちがいることも確かなようである。
人命の尊重という倫理を別にしても、問題は制度の作り方であり、高齢者を害悪と決めつけてそれを排除することによって解決する問題では全くない。どうも近頃の若い人たちの中には、ことにコンピュータに馴染みの深い人は、現実世界の社会や歴史を深く考えないで、まるでコンピュータのアルゴリズムを考えるように、操作的な面だけから、問題を浅い短絡的な理解だけから考える傾向があるのであろうか。
成田氏にしても、ひろゆき氏にしても、コンピュータに強い人であり、かかる影響力のある人の発言が軽薄だと、それに乗せられる人の増えることも問題になりそうである。
追記 :この冬に書いたまま忘れられていた記事です。