貧乏人は麦を食え

 一昨日だったかSNSを見ていたら興味深い話が載っていた。アメリカのシリアル大手のケロッグ社のCEO(最高経営責任者)のゲイリー・ピルニック氏がメディアとのインタビューで語った内容が物議を醸しているようである。

 ピルニック氏は2月21日、CNBCがアメリカ・ニューヨーク証券取引所から生放送している「Squawk on the Street」という番組に出演。食料品が高騰し、人々の収入に占める食費の割合がこれまでにないほど高まっていることについて問われると、「消費者がストレスを感じていることについて、私たちに何ができるか考えています」と述べ、「シリアルは価格面で手に取って貰いやすい商品で、食費に苦しむ消費者の受け皿になってきました」と発言。

 さらに、「『Dinnerにシリアルを』と広告でうたっています。家族でシリアルを食べれば、そうではない選択に比べてうんと安価です。シリアルに牛乳と果物を加えたとしても、1杯1ドルもかかりません」と語ったそうである。

 これついてキャスターに「革新的なマーケティング方法は理解しますが、『Dinnerにシリアルを』というのは邪道ではないか」と突っ込まれると、ピルニック氏は「消費者のストレスが増えるにつれて、トレンドになっていく」と自信を見せた由。

 この発言について大手メディアも「ケロッグ経営トップ、お金のない客にシリアルのDnnerを勧めて非難浴びる」(インディペンデント)、「ケロッグCEO『Dinnerにコーンフレークを食べさせればいい』」(CNN)などという見出しで、相次いで取り上げ、 ネット上でもピルニック氏の発言への批判が目立つたようである。

「たまに夕飯にシリアルを食べる人は大勢いる。でもそれは、手早く食べられるとか、どうしても食べたくてという理由からであり、食品の値上げで家計が厳しいから節約のためというのは馬鹿げている。食品を値上げして金儲けしている人がそういうことを言うのは残酷ではないか。」等。

 「傲慢さには驚かないが、非常に不快に思う」「10代の子どもに十分なシリアルが1杯1ドル以下ってどこの世界の話ですか?」「このCEOは年収いくら貰っている?ケロッグの従業員で最も低賃金の人はいくら貰っている?」「この人、自分はDinnerにシリアルを食べていないと思う」など怒りの声が上がっているなどと書かれているたそうである。

 これを読んですぐに記憶が蘇った。日本でもまだ戦後の貧しかった1955年頃のことであった。当時の池田勇人総理大臣が「貧乏人は麦を食え」と言って問題になったことを思い出した。

 いつの時代にも貧しい者を見下して「貧しい者はそれなりに貧しいものを食っていりゃ良い」といった政治家や金持ちの発言に、社会の平等を考えない貧乏人を見下した発言に社会の反発が起こるのは当然のことであろう。

 アメリカでは、「それがトレンドになっていくだろう」とまで言わせ、日本より貧富の差の激しい二極化が進んでいることを暗示しているものの様である。日本でもシリアルならぬ安いカップ麺で夕食を済ませている人も少なくないのではなかろうか。

 ちなみに、日本でのシリアルの値段は、カルビー・フルグラ750gmが 703円で、それに対して上等なドッグフードのロイヤルカナン食事療法食なら8kgが 18,025 円(800gm  1,802円)となっており、シリアルは上等なドッグフードより安いようである。