日本はどこへ行く

 最近の新聞を見ていると、いよいよ日本はどこへ行くのかと心配になってくる。テレビでは、国連総会に行った安倍首相が、トランプ大統領との貿易協定で、「ウインウインの関係」だと笑顔で話していたが、実質はアメリカの農産物の関税を減らし、大量のアメリカ産トウモロコシの輸入を約束して、中国に断られた輸入を日本が引き受け、大統領がアメリカ農民の勝利だと言っているのに、日本にとっては日本車の輸入関税は先延ばしにされただけで、自由・公正とは言い難く、安倍首相の発言とは裏腹に、新聞は貿易協定合意は日本が米に苦戦だとか書かれている。

 日本が未だにアメリカからの完全な独立を得られないままに、憲法の解釈を変えてまで、自衛隊の海外派遣を容認し、国民の願いを踏みにじってまで沖縄の辺野古基地の建設に固執し、大量の戦闘機などアメリカの武器を爆買いし、アメリカのためのイージス・アショアまで贖い、軍事的にもアメリカ従属を強めているが、世界情勢が明らかに徐々に変化していっていることも知っておくべきであろう。

 中国の台頭や、アメリカの国内事情も相まって、今やアメリカ単独の世界支配の歴史は終わり、新しい時代が始まろうとしている。今なお、中国を仮想敵国としての軍備増強が図られているが、アメリカは日本軍を尖兵として使い、自国の犠牲を減らすことを図っているのである。アメリカから独立すべきだし、最早、中国は日本が単独で戦って勝てる相手ではないことも知るべきであろう。

 それに、AIその他の技術的な進歩は、今後の戦争の様相を全面的に変えてしまうであろうから、現在に最新鋭の武器や戦術がどこまで役に立つか甚だ疑問である。本当の戦争になれば、小さな日本列島など水爆の四、五発で完全になくなってしまうことも勘定に入れておかねばならないであろう。

 そういうことを考えれば、軍事力の増強よりも、外交力を高め、平時より諸外国との交渉で、日本の信頼を高めておくことがいかに大事かがわかるが、日本の外交はあまりにも拙劣である。韓国との関係悪化など、見るに見兼ねる状況であるし、アメリカ従属で独自の外交の制限される面もあり、北朝鮮との外交も関連6ヶ国の中で日本だけが首脳会談も開けていないし、ロシアとの関係にも進展が見られない。

 アメリカ従属を続けることが次第に不利な環境に追いやられていく可能性についても知っておかねばならないであろう。

 一方、国内の情勢を見ると、「あいちトリエンナーレ」の補助金打ち切りや、首相の演説に対するヤジの取り締まりなどでもわかるように、言論その他の表現の自由の抑圧は益々あからさまにになり、テレビは政府に不都合なことを殆ど伝えなくなり、日本のニュースを割愛してまで、韓国の政治を流して嫌韓を煽ったり、スポーツで時間を埋めている。新聞も政府を忖度したニュースに偏った報道になってきている。

 そうした中で、政府は内閣府に力を集中して、官僚の力を削ぎ、不都合なことは隠蔽して、益々独裁的な傾向を強めている。その下ではモリカケ問題や、NHKに対する政府からの圧力、荻生田大臣その他の汚職問題などはもう、うやむやのうちに葬り去られようとしている。

 また、社会的問題としては、さしあたり、10月からの消費税増税がある。最初は社会保障に充てると言いながら、実際には大企業や富裕層の減税の埋め合わせに相当することとなるだけで、国民の給与は多くの先進国の間で、日本だけが減少し、貧困率は上がるばかりである。少子高齢化で人口減少が進むことが早くからわかっているのに対策が遅れ、老齢人口の活用、低賃金外国労働者の受け入れで対処しようとして、少子化の根本的な対策は放置されたままである。

 憲法を変えようとする安倍内閣には日本会議に属する大臣が多く、神社本庁との関係の深い者も多く、彼らが目指すものは憲法改正を通じて、天皇制の戦前政治体制への復帰であるが、今や世界の変化は大きく、彼らの目標である戦前復帰には、現実的な展望はどこにも見いだせず、いたずらに国民を遅れた退廃の世界へ導くに過ぎないことを知るべきである。

 時代は逆行を許さない。最早、日本には過去の時代に戻る道はない。未来に向かって新しい世界を切り開いて、国民の明るい展望を望む道しかないのではなかろうか。

 九十歳も越えた私はやがて鬼籍に入るであろうが、生まれ育ち、長く生きてきたこの国がどうなって行くか気にならざるを得ない。何とかうまく方向転換が出来て、幸せな国になって行くことを夢見ないではおれない。