過労死は増える

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 「働き方改革」法案が成立した。政府は一段落というが、経団連は早速今後の課題として裁量労働制の推進拡大などを目指して法案の再提出を言い出している。

 裁量労働制というのは、働いた労働時間ではなく、労使であらかじめ決めた時間を働いたと見なす「みなし労働時間制」のことであり、会社側から言わせれば、能力が低いために普通より長時間かかった労働者に余分の金を払うのはおかしいという論理から来ているものである。

 2007年にホワイトカラー・エグゼンプションを打ち出してから、経団連などが言い続けてきた課題で、労働者の賃金制度を資本主義のはじめ頃に盛んであった、請負制度に戻そうとするものである。

 歴史的に労資の長い戦いの中で、労働者が獲得して来た労働時間制度、それに伴う残業という概念を全面的に否定し、作業形態が変わったことを口実にして、労働の時間観念を奪い、請負制度に戻そうとする画期的な制度変更なのである。

 高度プロフェッショナル制度というのは、自由に時間を配分でき、時間ではなく結果で報酬を払うという仕組みすなわち請負制度の一種になるが、問題はその労働者に仕事の裁量権があるかないかである。今のところ、適用されるのは給料が月1070万円以上のものということになっているが、いろいろな手当や穂樹なども含まれるので、実質7〜800万円でも対象になりうるとも言われる。

 更には、竹中平蔵氏などがこういう法案は 小さく産んで大きく育てるものだと言っているように、一度法案が通れば、あとは政令で時間などは容易に変えられるので、広く適応されていくことのなるのことを考えておかねばならない。

 政府の説明では、高プロの労働者からの要望のごとく言っているが、自分に仕事の裁量権のある労働は少なく、これは明らかに経営者側からの要望であり、結果は過重労働を強いられることにならざるを得ない。自分に仕事の裁量権のあるのは、個人経営者ぐらいであろう。

 労働基準監督官の立場から見ても、労働時間に把握が出来なくなるので過重労働などの指導が困難になるであろうと言われ、労働基準法の遵守をも危うくする恐れが多い。初期の資本主義制度の頃のように過重労働が増え、過労死の多発が止められなくなる恐れが大きくなるのではなかろうか。