老夫婦もいろいろ

 私の女房は私よりも6歳若いが、それでも既に卒寿を超えている。私の気軽に話せる友人たちは皆すでに鬼籍に入り誰も残っていないが、女性の方が長生きするためか、女房の方はまだ親しい友達も健在で、今でも時々会って一緒に絵を描いたり、おしゃべりなどをしているようである。

 皆我々よりはいくらか若いこともあろうが、幸いまだ夫婦揃っている友人たちのようである。先日女房からその人たちからの面白い話を聞いた。もう皆老夫婦だけの家庭で静かに暮らしているようだが、それぞれの長い間の夫婦の歴史があり、何でもないことでも、それぞれの家庭での流儀があり、些細なことでも、それぞれにやり方が違っていて面白いと言うことであった。

 丁度、私が外から帰って来て、汗の滲んだシャツを脱ごうとした時のことだった。若い時はシャツぐらい簡単に脱ぎ捨てられたが、今ではシャツ一枚脱ぐのも簡単ではない。裾を捲り上げて脱ごうとしても、汗のついたシャツは体にこびりついてそう簡単には脱げない、それでも苦心して強引に引っ張り上げて脱ぐのだが、最近では、女房が見ていると、手出しをしてシャツを上へ引っ張り上げるのを助けてくれる。

 昔はそんなことにまで手出しをしなかった女房だが、歳をとると、面倒を見てやらねばと思うのか、こちらがもたもたいているのを見るに見かねてなのか知らないが、昔よりお節介をやきたがる。

 丁度、それについて、女房も友人たちの間で話題になったようだが、ある夫婦では、夫が

「脱がせてくれ」とやってきても「将来ひとりになったら誰も助けてくれないよ」と、敢えて手助けしないとか、また、別の家族では「まだ助けは無用」とばかり、手助けしようとする手を振り払うとかで、それぞれに長年連れ添ってきて歳をとった夫婦には、そんな些細なことでも、それぞれの流儀が出来ているようだと言うことであった。

 長年連れ添ってきた夫婦には、微細なことでも、それなりに色々違うものだなと感心したことであった。