自主独立国家への日本の夢

 私などの世代の者は、長い戦争の中で育ち、丁度成長した頃に国の崩壊、敗戦を経験したので、この世界を見るのに、今でも、それまでずっと続いて来た世界が、敗戦を契機に突然変わって、新しい世界が始まったような受け止め方をし易い。

 どうしても、戦前と戦後の比較で、戦前に長らく厳としてあった大日本帝国が滅んで、戦後にアメリカに従属した日本国が出来たが、いつの日にかは、また独立した国になるのだろうと思っていた。戦後に大日本帝国を完全に否定し、新しく生きることにしたけれども、どうしても戦後の日本の現在はまだ過渡的な時代で、そのうちに、幾ら何でも40~50年も経てば、独立した新しい日本の国になるのだろうと漠然と思って来た。

 しかし、現実は厳しいものである。もう敗戦後76年にもなるが、未だに、この国には依然としてアメリカ軍が駐留し、憲法を超える、日米安保条約日米地位協定によって、アメリカ軍は超法規的に日本の国内で自由に振る舞っている。アメリカの大統領は訪日の際には、先ずはアメリカの国内と同じ日本国内にあるアメリカ軍基地に着き、そこから米軍のヘリコプターで東京へ来ることになる。

 それに対して日米間の問題は駐留アメリカ軍と日本の政府高官による定期的な実務者会議で決められ、すべての協議は憲法を超えて、アメリカ優位に決まる。日本の総理大臣はアメリカの大統領が変われば、何よりも先に馳せ参じて、ご機嫌をとることになる。安倍首相のように、大統領就任以前から馳せ参じ、ポチのように振る舞ったこともあった。

 朝鮮戦争ヴェトナム戦争などのおかげもあって、戦後の日本は幸い復興を遂げ、先進国の仲間に入り、一時はJapan as No 1と言われるまでになったこともあるので、その後の30年にも及ぶ停滞にもかかわらず、今なお日本は独立した先進大国と思っている人も多いようだが、沖縄の人たちの日常生活での苦しみを知り、現実を直視して見るが良い。米国に対する自国の惨めさを嫌でも感じさせられる。臥薪嘗胆、それを踏まえて日本の将来のことを考えるべきではなかろうか。

 昭和よりも以前のこととなると、もう自分の生まれる前の事で、学習によって得た知識だけのことになるので、明治維新と言えば、随分昔のことのような感じがしていたが、明治維新が1868年だから、それから1945年(昭和20年)の敗戦までの大日本帝国は77年しか続かなかったわけである。敗戦から今日の2021年までが76年になるので、いつの間にか最早ほぼ同じ長さになってしまっている訳である。

 しかも、その間の国の独立という点で見ると、日本は安政の時代に、ハリスに結ばせられた日米修好通商条約という不平等条約にによって、治外法権の外国人居留地(租界)を横浜や神戸の他、あちこちに作らされて以来、長い間の努力の末に、やっとそれが解消されて、新日米通商航海条約が結ばれたのが1911年(明治44)のことである。欧米諸国と対等に付き合えるようになったのは、それから以後の敗戦までの34年間しかないことになる。しかも1939年には、アメリカが日本の中国侵略を非難して、この条約の破棄を宣言していたこともある。

 このように見ると、敗戦から今日までの76年というのが、いかに長いものかということがわかるとともに、明治の初めから今まで、哀れなことに、わが日本は殆どの期間、アメリカの目下の不平等な関係で来たと言える。自国の欠点は知りたくないが、現実からしか未来の展望はない。

 世界の情勢はどんどん変わっていく。日本の少子高齢化はますます進んでいくし、中国ばかりでなく、東南アジアやインドの発展も著しい。アフリカ諸国も確実に変わってきている。 その中で、日本も苦労してでも、ここらでもう一度、アメリカとも平等な関係を築くために努力し、完全に自立して、自主独立の道を歩むべきではなかろうか。いつまでも、このままの植民地まがいの従属関係を続けていくのか、そろそろ考えるべきであろう。