電動アシスト自転車

 高齢になって自転車に乗らなくなって、もうどのくらいになるだろう。休みの日などに、女房と一緒に、よく自転車を連ねて、空港や、伊丹、千里、箕面の方まで行って楽しんだものだったが、あれはいつ頃までのことだったのであろうか。歳をとって、いつしか乗らなくなって、長い間、我が家のガレージに、シートを被せたまま、自転車が二台、放置されていた時代も長く続いていたが、いつしかそれも姿を消してしまっていた。

 一昨年の秋、脊椎管狭窄症になって、休み休みでなくては歩けなくなった時に、自転車なら乗れることを思い出し、自転車での外出は無理にしても、止めた自転車に乗ってペダルを漕ぐようにすれば、歩く代わりの運動になるのではと思い、中古の自転車でも買おうか考えたことがあったが、そのうちに歩行器のような手押し車が手に入ったので、それを押して歩くようになり、そのままになった。

 ところが、足が悪くなり、歩くのが遅く、疲れやすくなって、自由に遠くまでは歩いていけない日が続くと、自転車があれば、もっと自由に遠くまで行けるのにという思いが強くなり、自転車が懐かしくなった。また乗ってみたいとも思うようになったが、「もう10年若ければ」という周囲の意見に従わざるを得なかった。

 そんな思いを抱えながら、街を散策していると、追い抜いていく自転車に自然と目がいく。昼間に歩くことが多いためか、見かける自転車の多くは女性が乗っている。買い物や近所廻りの用事に使っているのであろう。幼稚園の送り迎えも多い。

 池田は坂の多い街なので、坂道をふうふう言いながら、一生懸命に自転車を漕いで登っていく人もいれば、諦めて自転車を押しながら行く人もいる。ところが、この頃は子供を乗せた自転車が坂道を悠々と漕いで上がっていくではないか。見ると、電動アシスト自転車である。

 気をつけて見てみると、この頃の若いお母さんが子供を乗せて走っている自転車は、もう殆ど全てが電動アシスト自転車である。先日幼稚園の前に10台を超える自転車が並んで駐輪しているのを見たが、全てが電動付きであった。普通の自転車を押しながら登っていく坂道を、子供を乗せた電動アシスト自転車がスイスイと気持ち良さそうに上がっていく。

 あまり羨ましいので、二輪車は危ないから、新聞広告で見た三輪自転車で電動付きのものでも買い求めようかとも思ったが、三輪車は乗るのには安全であっても、狭い道や、車の多い道路などでの行動は二輪車のようにはいかないだろうし、やはり危ないと言われては躊躇せざるを得ない。

 もう無理だろうとは分かっているが、やはりもう一度、青空の下、空いた広い真っ直ぐな道路ででも、自転車に乗って颯爽と風をきって走って見たいものである。