最低の総理大臣

 新型コロナがパンデミックになって、出来るだけ自宅に留まろうと首相が国民に呼びかけた時に、首相が自身も自宅に留まっていることを宣伝するためにか、SNSに自分が自宅で愛犬を抱いて寛いで、コヒーを飲んでいる写真を出して、多くの国民の顰蹙を買ったことはまだ記憶に新しい。

 これは、もっぱら今井補佐官の入れ知恵かと言われているが、ここらでStay Homeの模範を示したらPRにもなるのではということで、わざわざ演出したものであろうが、あの写真を見て、この人はもともと首相は無理な人物だと思わざるを得なかった。何故なら、新型コロナで休業を強いられ、生活にも困る人が沢山生じているところで、無理に出歩かないように要請するのである。政治家でありながら、そういう人たちの生活感覚がわかっていないからである。

 恐らく、奨めた補佐官も一流ホテルの支配人の息子なので、本人にも、悪気があってしたのではなく、自分の個人的な感覚で、首相が見本となって家庭で寛ぐ様子を見せて、国民の皆さんも出来るだけ家庭で寛ぐようにしましょうという見本にしたらと考えたのではなかろうか。

 しかし、同じ家庭に留まるといっても、安部首相が家庭で寛ぐのと、多くの国民が新型コロナの流行のために、止む無く自宅に留まらざるを得ないのとでは雲泥の違いがある。コロナのために仕事が出来ず、休まざるを得ないが、収入がなくなり、明日からどうすれば良いのか困難に突き当たっている人にとっては、家でゆっくり寛ぐどころか、生活の困窮にどう対処すべきか切羽づまった感じでいるのである。

 そういうところに呑気に愛犬を抱いて家庭で寛いでいる姿を見せて「私も家に留まっています。皆さんも出来るだけ家にいましょう」と言われたのでは、腹の立たない人の方が珍しいであろう。そういう庶民感覚との乖離が分からなくて、こんな映像をわざわざ見せる人には政治家の資格がないと言っても良いだろう。ぼんぼん育ちの首相には自分の思想がなく、庶民の感覚とのずれが大きい。

 コロナ対策にしても、中国での爆発的な感染が報じられているのに、4月に予定されていた習主席の来日の予定もあってか、春節の中国からの観光客を歓迎すると発表しているのを初めとして、日本での感染発生に対する感度も鈍く、連日のように宴会を続けた後にやっと対策を発表、それでもオリンピック開催をめざして出来るだけ小さく収めようとして、感染拡大の発表を抑えていたようで、オリンピックの延期が決まった途端に感染者が急増し、結局全国的な特別措置法を出さなければならなくしてしまっている。

 こういう感染症パンデミックが起こったような時こそ、首相が先頭に立って政治力を発揮し、国民に直接話しかけるなどして、国民の不安に答え、人気を獲得するなど、政治家の出番なのに、日本の首相はあまりにも情けない。イギリスやドイツなどの首相の演説を聞いていて情けない気がしたのは私だけではあるまい。

 日本の首相はコロナ対策を国民に呼びかけるのにも、官僚の書いた文章をプロンプターで読むだけで、自分の言葉で喋らないから、聴衆に響かない。おまけに、一般教養に欠けるので、プロンプターを読み間違えたり、市井 云々 目途など漢字の読み間違えが起こるし、やたらと決まった言い回しばかりを繰り返し、返って評判を落とすことになる。

 しかもコロナ対策も全てが遅くて貧弱である。外国に対してはいい顔をして大金を出すのに、内に向かっては、自粛に対する補償さえ渋り、眼前の対策よりコロナ後の経済回復時の対策に力を入れるような誤りまで犯している。補償に関しては、初めは肉券だの魚券を配るなどとの荒唐無稽な話まで飛び出し、個人に対する補償も散々揉めて、やっと全国民に10万円の給付をすることになったなど、種外国の補償に比べてあまりにも遅く、見劣りがする。 

「アベノマスク」も似たようなもので、マスク不足で国民が困っているので、政府から配れば喜ばれるだろうという言葉に乗せられて、利権がらみの業者に600億円とかいう大金を払って欠陥品の多いマスクを掴まされて、紆余曲折を経て、未だに多くの国民には届いていない。こういうものは緊急に応じてこそ意味のあるもので、もう巷にマスクが余り出した頃に配られても誰にも喜ばれない。税金の無駄使いだと非難されるだけである。

 金持ちのボンボンが権力まで持つものだたら、怖さを知らず、オリンピック誘致の時などでもわかるように、平気でハッタリをかましたり、見え透いた嘘を平気で言う。そこへ権力に物を言わせて、私利私欲に無頓着、外には良い顔を見せも、内弁慶でずる賢くて周囲に忖度させて悪事を隠して追及を逃れようとする。

 その結果が、これまでの数々の疑惑事件となって露わになっている。森友学園加計学園 桜を見る会 などの数々の疑惑は時とともに増えるばかりである。それでもコロナの危機を利用してまで何とか憲法改正への道筋をつけようとして色々工作してきたようである。

 そうした国民を無視した上での悪行の積み重ねの上に、挙げ句の果てが自らへの追求の手を逃れるためか、検察幹部人事にまで介入して三権分立の民主主義の根幹まで歪めようとして来ているのである。

 今回の検察庁幹部の定年延長の特例など、あまりにも見え透いた無理筋を国家公務員法に紛れ込ませて、新型コロナの問題で混乱しているどさくさに紛れて国会に提出するなど、まさの火事場泥棒と言われても当然なやり方で通そうとしてきたのである。

 国民が怒るのも当然である。素人から見てもあまりにも自分勝手な姑息なやり方である。法案に対する国民の反対の声はこれまでになく大きくなって来た。内閣支持率も急に落ちている。政府は法案をとりあえず引っ込めざるを得なくなったようである。まだ油断は禁物であるが、もうここらあたりで安倍首相にはお引き取り願わなければ、この国は本当にめちゃくちゃになってしまいそうである。