国民の命より米軍駐留が優先するのか

 以前からコロナ対策としての水際作戦の抜け穴として、日米地位協定による米軍人やその家族などの検疫なしの国内基地への移動や基地からの外出が指摘されていたが、それが現実の問題となった。

 12月上旬に1000人規模の兵隊が米本国などから日本の検疫を受けずに沖縄入りし、オミクロン変異種のクラスター感染が基地の米兵の間に広がり、基地からの自由な外出によって、地域住民に広がった。米兵やその家族には基地外に住む者もおり、マスクなしの飲酒運転で捕まった兵隊もいたとか。

 せっかく岸田首相がさしあたりの目玉政策として、先頭に立ってオミクロン感染を何とか水際で食い止めようとしていたのに、思わぬ伏兵に足を掬われたのである。毎日新聞には「岸田首相も米軍に憤慨」などとも書かれていたが、米軍相手ではどうにもならず、たちまちのうちに第6波が始まってしまった。

 全国の感染者の分布を見ても、沖縄をトップに、岩国基地のある山口県や、すぐ隣の広島県、横須賀などに集中しているのである。国内でも、暮れから正月にかけての全国的な人の移動も重なっていたので、たちまち全国的にオミクロン株が拡がってしまった。

 沖縄の玉城知事は米軍に厳重に申し入れたが、米軍の反応は鈍く、日本政府に『米軍の入国停止』『基地からの外出禁止』を米国に要求することを申し入れたが、日本政府の反応も遅い。何日も経って、ようやく林外務大臣アメリカのブリンケン国務長官に申し入れて、米軍も日本の防疫対策にあわせて対処することになったらしいが、もはや手遅れである。

 これらの根本にあり、この十分な感染防止策や情報提供もない状況をつくり出しているのは、日本側がコントロール出来ない日米地位協定の構造的な問題によるものである。

 流石に国民の反発も強く、「入国の停止などのしっかりとした措置を米側に求めるべきだ。それができないなら、もう独立国とは言えない」とか、「日本政府はまず在日米軍の無責任なコロナ対応に抗議し(満身の怒りをもって)、少なくとも日本国内と同等の措置を約束させるべきです」「市民の安全を守らずして何が安全保障か」等と多くの声が上がっている。 日本平和委員会も1月5日に日米地位協定の改正を求めて政府に要望書を出している。

 それにもかかわらず、政府の態度は煮え切らない。岸田首相は在日米軍が感染拡大の原因となったとの指摘に関し「現時点で感染拡大の原因、あるいは感染ルートを断定するのは難しい」と述べているが、米軍と地域住民のオミクロンは遺伝子解析の結果でも同一だし、感染の経過を見ても、少なくとも沖縄などの状況は米軍からの感染であることは間違いないであろう。

 しかも、国民の強い要望にも関わらず、6日、岸田首相は在日米軍部隊の検疫や新型コロナウイルス感染拡大防止対策を米側に委ねる根拠となっている日米地位協定について「改定は考えていない」「現実的な対応が大事」と語ったそうである。

 国民の命より米軍の駐留が政府にとってはより重要だというのであろうか。政府は強く米軍に抗議し、この際、多くの国民生活の妨げとなっている日米地位協定を改定して、国民の健康を守るべきである、それが政府なとって何よりも優先すべきことではなかろうか。