強者に弱く、弱者に強い

 5月26日の朝日新聞を見て驚いた。去る5月8日に安倍首相がトランプ大統領と電話で協議をした際、トランプ大統領からアメリカで人工呼吸器を作り過ぎて、余って困っているので買わないかという打診があったそうである。トランプ氏は「いつでも出荷できるから」と上機嫌だったそうである。

 ところが、人工呼吸器は日本国内でも増産を進めているので、日本側は一旦は「不足は起きていない」と答えたそうだが、首相官邸内で再検討した結果、コロナの第2波に備えるということで、まずは1,000台程度を購入することにしたそうである。

 一方、紙面の同じところに載っていたのだが、日本のPCR検査が増えないで困っていることを知った韓国政府が、早くから日本にPCR検査キットの提供を検討していることが知られていた。ところが、こちらに対しては、韓国側は日本側からの要請があればと言っているのに、日本の政府幹部は「米政府からは打診があったが、韓国政府からは申し出がない」と述べて、今のところ韓国の折角の提案には応じていないようである。

 不要な人工呼吸器を買うのと、足りないPCR検査キットを手に入れるのと、どちらが国のため、国民のためになるかは言うまでもない。政府は本当に真剣に国民のために、コロナ対策をやっているのであろうか疑いたくなる。

 日本のPCR検査の少なさが世界から非難の的になっているのに、韓国からだと言って断る理由がどこにあるのか。韓国のコロナ対策は初期からPCRを大量に実施して、流行を物の見事に抑えたとして、世界の優等生とみなされているのである。

 アメリカからはさしあたり不要なものまで、相手の言うがままに買うのに、いくらいろいろな問題を抱えた隣国だからと言って、国民のコロナ対策に役立つ提案をどうして受けないのか。

 日本政府の狭量さと、強い者には卑屈で、弱い者には傲慢な態度に腹が立つとともに、国民として、政府のあまりにもの情けなさを悲しく思わざるを得ない。