情けない祖国

 安倍内閣の時には、あまりの滅茶苦茶振りに腹の立てどうしだったが、今の菅内閣となると、最早、怒りより情けなさが先行する。

 安倍氏の場合は「金持ちの坊ちゃん?」で、怖いもの知らずなので、森友、加計学園問題や桜園遊会などの公私混同の問題を起こすし、黒川人事のような無茶を通そうとしたりすることが多かった。

 トランプ大統領が決まった時には一番に飛んで行って、ゴルフで個人的な関係を作り、大統領のポチと言われるようになったし、オリンピック誘致では、「アンダーコントロール」と嘘の大見えを切ったりしたのも彼らしい。

 また、コロナ対策では、思いつきで、役に立たないアベノマスクを配ったり、自宅待機ということで、愛犬と戯れ、コーヒーを飲み自宅で寛ぐ映像を流して失笑を買ったのも、本領を発揮というところである。最後に最長政権達成とともに、無責任にも、仮病を使って急に辞めてしまったおまけまでつく。

 ところが、それを引き継いだ菅首相は、安倍氏とは全く異なる。田舎から出て来た、叩き上げの人物だという触れ込みであったが、長い間の官房長官としての物事の対応振りを見ていると、この人は番頭であっても、主人の器ではないとしか見えなかった。

 案の定、就任早々言ったのが「自助、共助、公助」でまずは自分でしろ、国は当てにするなということであった。これはどんな為政者でも最初に言う言葉ではない。次いで、すぐに学術会議会員選挙での不承認問題が出てきた。これについては政府は未だに何の説明もしない。

 国民に説明する、国民を説得する、責任を取るという3Sが民主的な政権の基本である。ところが菅政権では、それが全く守られていない。それどころか、緊急事態宣言で飲食業者に休業を要請するのに、酒屋の組合や銀行に圧力をかけて、取引停止圧力で、飲食業者に休業を強制しようとする、ヤクザまがいの手法まで使おうとするなど、情けなくて見ておれない。

 しかもやることなすこと、全てが失敗の連続である。コロナ対策にしても、初めから、流行のまだ治らないうちから、Go To 政策を進めて感染収束に失敗し、第二波、第三波と流行を繰り返しているのに、蔓延防止宣言を作ったり、緊急事態宣言を中途半端で打ち切って、感染の再燃を起こしたりと失政を繰り返して来た。

 そして挙げ句の果てに、人々が心配しているのを押し切って、常識では考えられない、緊急事態宣言下でのオリンピック開催まで強引に進めようとして、国論を分裂させ、多くの国民の怒りを買っている。

 それでも、国民からの追求に対して、「安全安心の大会を開催する」とだけ繰り返すが、安全安心の基準や、どうしたら安全安心の大会が開けるのか何の説明もしない。

 大会が開けば、盛り上がって、反対の声も収まるであろうと高を括っていたようであるが、実際にオリンピック中に第五波が予想以上に広がって来ており、どうする積もりであろうか。東京の感染者が2848人、大阪でも741人と急増していても、「人流も減っているので、中止はありません」と明言し、国民の心配には答えようとしない。

 内閣の支持率が30%まで落ち、不支持率が上がるのも当然であろう。一部の人が騒いでも、無視して強行突破すれば良いと考えているようだが、政府に対する不信がこれほど広がったのは、安倍政権時代にもなかったことではなかろうか。

   夏富士や国の衰へまざまざと

 と、朝日俳壇に出ていたが、多くの人が同感されたことであろう。菅首相の思惑では、オリンピックを起爆剤に人気も回復し、秋の選挙を乗り切れるのではないかと踏んでいるようだが、この秋の国政選挙がどうなることであろうか。

 私も、オリンピックが実際に行われるようになれば、世論も大分変わるのではなかろうかと思っていたが、今回は、メディアの情報などだけからでも、これまでにないコロナへの不安と、政権へのと不信が広がっているのを感じている。外国紙の中には「東京五輪菅首相のためだけに開催されるている」と批判しているものもある。

 ここらで、もう菅内閣にはお引き取り願って、この際、自民党惨敗、政権交代となってはくれないかという夢を抱きたいが、警察官僚を抑えた陰険な菅首相がどう立ち回るか、恐ろしい気がしてならない。

 コロナの第5波は既に来ている。今後の感染状況の中で、オリンピックは実際どうなっていくのだろうか。1964年の夢とは全く異なった惨めなオリンピックになってしまったが、その後はどいうことになるのであろうか。恐る恐る未来に近づいて行くよりなさそうである。