あの忌まわしい15年も続いた戦争。東洋平和のためと言いながら、中国大陸へ侵略し、多くの人々を殺し、挙げ句の果てが、太平洋戦争となり、国中が焼け野が原になって、多くの国民が殺されたあの戦争は、全て天皇のためということで戦わされた。万世一系の皇統を守り、天皇陛下のためには、国民は鴻毛の如く軽い命を投げ出して戦えと教えられ、多くの国民がその通りに死ぬ覚悟で戦った。そして負けた。
戦後の飢えや餓死、闇市、浮浪少年、買出し、たけのこ生活、食うやくわずの悲惨な生活も含めて、あの戦争は死ぬまで決して忘れることは出来ない。戦争がもしも、もう半年続いていたら、私もほぼ確実に戦死していたであろう。帝国海軍の端くれで、天皇のために死ぬことが悠久の大義に生きるだと真剣に思っていたのだった。
アメリカの占領時代には、日本人は十二歳の子供並みだ、三等国だのと馬鹿にされ、日本に残った工場施設は全部中国へ持って行って蒋介石に渡そうという話まであったが、朝鮮戦争、ベトナム戦争で日本が米軍の補給基地になったことが幸いして、戦後の復興を果たし、再びアジアの大国となることが出来たのであった。
しかし、講和条約締結後も、日米安保条約や地位協定によって、日本はずっとアメリカの従属国になってしまったままで、未だに日本の主権はアメリカに握られたままである。沖縄の基地問題が度々問題になるが、沖縄のみならず日本国中、アメリカ軍は自由に行動出来るのであり、自衛隊は日米協力というが、横田の米軍司令部の実質的な傘下に置かれているのである。
日本政府は最近になって、急に軍備増強、軍事費をGDPの2%にし、アメリカからトマホークを大量に購入して、敵基地への先制攻撃を可能にすると言い、その予算がないので、国民に増税して賄うという。しかも、敵基地先制攻撃も日米協力でするという。
何処を仮想敵国としているのかというと、最大の相手が中国、それに次いで北朝鮮とロシアだという。アメリカは中国の台頭を何とか抑えたいようで、色々手を打ってきていることや、日本政府が予算の裏付けも無しに、急に大量の兵器を備え、敵基地先制攻撃まで可能にすると動き出したのを見ると、これらの施作はアメリカから要請に応えたものであろう。
岸田首相は日本では国民に相談もせずに決めながら、アメリカではバイデン大統領に説明して歓迎されたそうで、どう見ても、初めからアメリカの要請に答えろことを国民の思いよりも優先させているとしか思えない。
ところが冷静になって考えてみればわかるが、現在日本が今にも攻撃を受ける様な危険が差し迫っているとは考えられないではないか。なぜ今慌ててこの様な危険を犯す必要があるのか。先制攻撃の準備は相手の抑制よりも競合を呼び起こすことは明らかである。
『高野孟のTHE JOURNAL』によると、著者でジャーナリストの高野孟さんが、我が国にとって最大の脅威とされる中国や北朝鮮について、「両国が日本に上陸侵攻し、直接軍事占領を目論むという事態は200%ない」と断言している。その単純にして明快な理由も記してある由である。
しかも、中国は隣国であり、日本の最大の貿易相手国である。日本のGDPの4倍もある経済大国でもある。面積も広大で、人口も日本の10倍近くもある。その上、歴史的にも文化的にも、古くから切っても切れない関係にある国であり、中国なしでは日本は生きて行けないし、戦争をして勝てる相手ではないのである。
1972年9月、田中角栄首相の訪中により、当時の周恩来総理との間で、「(日中両国は)すべての紛争を平和的手段により解決し、武力または武力による威嚇に訴えないことを確認する」と友好条約を結んでもいるのである。しかも、現在日本と中国の間には戦争をしてまで解決しなければならない様な矛盾点は何もないではないか。
敵基地先制攻撃だの抑止力だの、周辺国に脅威を与える様な事を自ら進んで進めるより、平和憲法を守り、周辺国に脅威を与えることを避け、善隣友好の外交に力を入れて、相互の理解を深める方がはるかにわが国の安全にとっても、アジアの平和にとっても重要なことは明らかであろう。
先制攻撃をすれば、何処の国であれ、当然日本に対する反撃が起こり、戦争になる。日本の現状が戦争に向かない国であることも、既に先に述べた通りである。アメリカは代理戦争に日本を陥れても、世界大戦を避けるためには、決して深入りしないでろう。武器だけは大量に供給しても、決して日本を守ってくれないことをも知るべきである。
今の流れのまま先に進むと、この国は再び破滅することをも考えておかねばならないであろう。この国は2度目の破綻で、今度は本当の滅びてしまうかも知れない。