コロナから逃げる政権

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 台湾が7人、韓国が31人、日本が1534人。この原稿を書いている8月1日に発表された、新型コロナウイルスの1日の新規感染者数である。台湾の7人中6人、韓国の31人中23人は海外からの渡航者で、実質は台湾は1人、韓国は8人である。

 タイは2人で2人とも海外からの渡航者。同じ島国のニュージーランドも2人。新型コロナウイルスの猛威は地域差があり、東アジアの日本は被害は少なく済んだ可能性が高かったが、近隣国で言えばフィリピンと同様に失敗したようである。

 これまでは感染症といえば、開発の遅れた国での出来事で、未開発の国の人は気の毒になあと、どうしても他人事ような見方が多かった。たまに先進国に飛び火しても、やがて退治されて事なきを得るのが普通であった。ところが、今回のコロナはもう世界中に広がってしまい、アメリカが一番感染者が多く、死者も多い。

 日本はオリンピックを気にするあまり、緊急事態宣言を出すのが遅れたが、幸い大きな流行にならずに済み、その解除がやや早かっただろうけれど、5月25日の全国緊急事態宣言解除に際しては、安倍首相が記者会見で「日本モデルが成功した」と大見得を切って、安心感を漂わせたが、それが失敗の始まりであった。

  その時にこそ力を入れて、コロナ絶滅に努力すべきだったのに、PCR検査や隔離を広げなくてもよかったという雰囲気を広げてしまった。それに浮かれた政府や関連業者が、これからはウィズコロナだなどと言い出して、経済優先の姿勢をあらわにし、7月になると、本来コロナの収束後の行うべきGoTo トラベルの実施を前倒しにして、オリンピックのために設けられた7月の4連休に合わせて初めてしまった。

 利権が絡むためか、一旦決められたGoToキャンペーは、コロナ感染が再び増えているにも関わらず始められ、当然の結果として、コロナの感染者数は全国的に増加の勢いを増し、例年人の移動の多いお盆の時期を迎へ、いよいよコロナの爆発的な第2波の流行が進んできた。

 そもそも、最大の景気対策は、感染者数を減らすことではないだろうか。感染者数が激減すれば、自然と経済も順調に回るようになる。せっかく緊急事態宣言を解除出来るまで押さえ込んだのである。この時にこそコロナ感染を完全に抑え組むチャンスだったのである。経済に目が眩んで、せっかくの緊急事態宣言解除を無駄にしてしまったのである。

「 二兎を追う者は一兎をも得ず」の格言を思い起こすべきであろう。利権に目がくらみ、重大な失敗を犯した責任は大きい。この時期に国会を早々に閉じ、安倍総理は沈黙を守り、加藤

厚生大臣も出てこない。西村経済産業大臣だけが担当大臣として第一線に立っているが、東京都や他の自治体の首長らとの意見もバラバラで、責任の所在さえ明らかでない。お盆を控えて帰省を考えている人々の不安を助長するばかりである。このままでは感染も経済も共にうまく行かないことは明らかであろう。

 今や確実にコロナ感染者は全国的に増えている。経済をうまくまわすためにも、最早コロナ感染の第二波を徹底的に抑えるよりないであろう。それには政府の指導力を強化し、統一した見解のもとで、必要ならば、緊急事態宣言を再宣言してでも、いつまでも増えないPCR検査を抜本的に増やして、感染者を把握し、国民に注意を促すだけではなく、医療体制をも強化し、事実として、徹底的にコロナ感染を抑え込むことが今の最優先課題であろう。

 ただ優柔不断な政府はここまでくれば、利権に振り回されているので、一旦始めたGoTo政策などの経済優先政策は変えられない。その結果当然、今後コロナの流行が激しくなり、手がつけられなくなって、やむなく緊急事態の際宣言をしても、なかなか治らない事態になることも十分考えておかねばならないであろう。