これでもオリンピックをやる積もりなのか

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  オリンピックは7月23日から8月8日と決まっているから、もう2ヶ月半しかない。ところが、今なお、コロナの流行が猖獗を極め、各地で緊急事態宣言が出され、大阪では最早重症になっても病院にも入れず、自宅や待機施設で亡くなる人まで何人も出ている。医療崩壊である。

 そのような中では、医療界だけでなく、一般国民も8割の人がオリンピックは中止すべきだと言っている。それにも関わらず、聖火リレーは続けられ、選手の選抜試合など準備は着々と進められている。IOCのバッハ会長も4月21日の会見で「緊急事態宣言とオリンピックの開催とは無関係だ」と言い、菅首相も4月23日「IOCは開催を決定している」と述べただけで、このコロナ流行の下で政府はオリンピック開催をどうするのか国民に対して何の説明もない。

 組織委員会の新会長に就任した橋本聖子氏は、五輪の開催可否について「大会に参加いただく関係者、受け入れる都民・国民、双方にとって『安全最優先の大会』を実現し、アスリートたちが迷いなく大会の舞台に立つことができるよう尽力したい」と開催に向けて意欲を示し、着々準備を進めているようだが、東京都の小池知事も緊急事態宣言を出しながらも、オリンピックの中止については未だ何も言わない。

 これで本当に安全安心な大会を実現できるのか、誰も説得力のある説明をしない。人々の命と暮らしがかかる感染症対策に関する判断が、政治的な思惑で左右されるようなことがあってはならない。

 海外からもイギリスの医学雑誌はオリンピックはやめるべきと言っているし、英・ガーディアン紙も #看護師の五輪派遣は困りますツイッターデモを報じ、反響は世界規模で広がっている。また、インドでは変異株の流行で悲惨な状態となり、欧米諸国に日本も加わった救援活動が始まっている。新型コロナウイルスの猛威は収まる様子もなく、医療現場はひっ迫。「五輪をやる状況ではない」との世論が大半を占める現状になっている。

 そういった内外情勢を考えれば、結局誰がいつ、どのような形で中止を決断するのかと言うことになりそうである。バッハ会長が来週ぐらい来日するようだが、IOCは収益のほとんどを4年に1回の夏季五輪でまかなっており、最も大きな収入源であるテレビ放映権、大手広告代理店やスポンサーからの多額の拠出金などの〝五輪マネー〟の流れが止まれば、たちまち存立の危機に陥るので、バッハ会長が断を下すのは難しい。

 そうかと言って東京都、または日本政府が中止を決めれば、おそらく日本側に多額の違約金の支払いが課せられるのではなかろうか。法曹関連に携わる組織委関係者によると「バッハ会長、菅首相、小池さん。キーパーソンは沢山いますが、さすがに独断で決められない。多方面に影響を及ぼすし、代償が大きすぎる。最終的には5者会談の場で決まることになるのでは」と臆測含みで話しているとか書かれている。

 しかし、結局は日本政府なり東京都が、違約金や経済的デメリットを天秤にかけても、中止を訴えた方が政治的メリットがあると判断して、中止ということで手を打つしかないのではなかろうか。

 実際どうなるのか分からないが、それにしても国民を無視した今の進め方はどう考えても民主的な国家の進める方法ではない。総理大臣はコロナ対策にしろ、オリンピックにしろ、国民の心配に配慮して、もっと明確な言葉で国民に説明するべきであろう。