ワールドカップ

 今回のワールドカップでは、日本のチームはドイツやスペインの強豪に勝ったが、クロアチアに負けてベスト8には残れず終わった。
 終わってやれやれという感じがした。ワールドカップが始まる前から、テレビはワールドカップばかり、朝起きるとテレビは嫌でも何処かのサッカーの試合を中継している。6時のニュースの時刻が来ても、中継中の試合が終わらなければ始まらない。それなのに、ニュースが始まったら、またトップニュースはワールドカップなのである。まるで政治も社会も何の変化もないかのようである。
 それだけでは済まず、テレビは一日中繰り返し、繰り返し、サッカーが流され、色々詳しい解説までしてくれる。特に日本のチームについては、詳しく何遍も同じ試合を見せてくれる。日本中がサッカーに魅せられてしまっているようであった。サッカーの詳しいことまで解説してくれる。日本人を皆サッカーの玄人にせんばかりである。
 「日本人はみんな、そんなにサッカー好きだった?」W杯ドイツ戦勝利でのお祭り騒ぎに戸惑う記者は考えた」と誰かが書いていた。「 にわか盛り上がりも否定はしないが、日本社会の特性も?」 と千葉商科大の常見陽平准教授は言っていたそうである。「周囲が盛り上がっていると、その雰囲気に合わせようという日本特有の空気感である」コロナのマスクや、他の色々な所で見られる、日本人の危険な方向に流れかねない同調主義である。 

 「サッカーなどどうでもいい人もそこそこいることを忘れないでほしい」と書き込んでいる人もいた。サッカーは見ていて楽しいし、日本のチームが勝てばやはり嬉しい。しかし、あくまでもエンターテイメントトとしての話であり、他所の国の好プレーにも拍手を送りたい。

 ただ日本の応援チームに日の丸に必勝と書かれた鉢巻をしているサポーターがいて、それを大写しにした映像が流れていたが、それにはギョッとさせられた。今の若い人にはもうわからないのであろうから、悪気はないのだろうが、我々戦争経験者には、あの負け戦の最後の足掻きとも言える特攻隊員があの鉢巻をしており、思わずそれを思い出さされて気持ちが悪くなった。

 それは兎も角、こうして皆がワールドカップに浮かれている裏で、日本の国が何処へ進んで行こうとしているのか大事なことを忘れてはなるまい。政府御用達のNHKなどは意図的にワールドカップを盛り上げて、重要な政治的な問題を誤魔化そうとしているのではないかと疑いたくもなる。

 今やこの国の政治の世界では、折角持っている平和憲法をかなぐり捨てて、予算もないのに国民の税金をかけてまでして大軍拡を進め、今や敵基地への先制攻撃さえ可能にしようとしているのである。先制攻撃をかければ当然反撃を呼び、戦争になる。それも、アメリカのための行使も「ノー」とは言えないというのだから恐ろしい。

 ワールドカップに一喜一憂するのも良いが、自分たちが住む日本の国の将来に無関心では、再び77年前の悲惨な運命に陥る恐れが大きくなることも知るべきであろう。NHKなどの公共放送はスポーツ放送も良いが、そう言った国民の運命に関わる情報ををもっと優先して詳しく丁寧に報道する義務があるのではなかろうか。