保育園での幼児虐待事件

 静岡県の保育園に勤務していた元保育士3人が園児への暴行の疑いで逮捕された。安心して子供を預けるための保育園で絶対にあってはならないことであるが、同様なことは全国で相次いで起こっており、懲罰だけでなく、実態の解明や再発防止が不可欠である。

 3人の保育士の責任は重大であるが、園側も保育士全員から誓約書を書かせたりして、口止めを図るなど許せない行為がされていた様である。園にとっては、悪事の反省よりも園の運営の方が優先するのであろう。

 つい数ヶ月前には、別の保育園で、送迎バスの中に取り残された園児が死亡するという痛ましい事件もあった。これでは親が安心して子供を保育園に預けられないではないか。この様なあちこちの保育園で問題が起こるということは、その背景に保育園の運営のあり方に問題がると考えねばならないであろう。

 数年前には、子供を預ける保育園がないということが社会問題となった。それに対して、政府は民間の保育所を増やし、保育所の定員不足の問題はかなり解消されつうあるそうだが、政府の対応は国が責任を持って保育制度の改善をするのではなく、保育の内容には手をつけずに、すべて民間任せで、数だけ増やしたものであった。

 従って、保育に内容は改善されず、一人の子供あたりの保育員の数は変わらず、4〜5歳児の場合には30名の子どもに対して保育員一人という、常識では考えられない様な少ない人数で面倒を見なければならず、過重労働の上、給与は悪い職場になっているのである。

 そういう実態の解明や、その改善なくしては、再び同様なことが繰り返されることは言を待たないであろう。素人が考えても、まだ右も左も分からず、勝手に動き回って目が離せない子供を危険な行動から守り、トイレの世話や喧嘩、勝手な行動の見守りなどをしながら、しかも個々の子供の発達の援助などまでするのは大変なことである。

 せいぜい面倒を見得るのは4〜5人といったところで、30人はとても無理であろう。外国ではずっと少ない基準になっているそうである。

 そういった労働条件が背景にあって起こった事件であることを知り、そこを改善しなければ、いくら結果としての個々の出来事に懲罰を加えても改善されないであろう。

 送迎バスに取り残された園児の死亡事件でも、保育員一人当たりの園児の数が少なければ、バスを運転していた園長が気が付かなかったとしても、保育士がすぐに園児の不在に気がついて手を打つたのであろうが、20人、30人と大勢の園児を抱えていては、多忙のために一人の欠席を忘れてしまっても不思議ではないであろう。

 不当な暴力は絶対に許せないが、事件の再発を防ぎ、保育園の運営の改善のためには、保育員の負担の軽減と待遇の改善が何よりも重要であろう。このままでは、再び不祥事が起こることが避けられないのではなかろうか。