先日新聞を読んでいて衝撃を受けた。コロナの感染状況が発表される中、コロナの影響で失業して貧困の陥っている人たちや、アルバイトが出来なくなって学校を辞めなければならなくなった学生のことなどが報じられている。また、世界中で所得格差がひどくなって、たった1%の大金持ちの財産が残り99%の人たちの財産と同じだなどと言った情報も流されている。しかし、まさかこの今の日本で、餓死して死ぬ人がいるとは想像出来なかったので驚いた。こんな悲しいことがあって良いのであろうか。
新聞によれば、昨年9月大阪の高石市で、高齢女性が困窮の末に、餓死したと言うことである。同居していた49歳の息子も弱っていたところを保護され、「自分と母には戸籍がなく、市などに相談出来なかった」と打ち明けたそうである。
実は、女性は長崎出身の78歳で、戦争孤児で、戸籍も不明のまま育ち、内縁の夫と暮らしていたが、夫が5年前に死亡し、息子と共に遺産を生活費に当てて暮らしていたが、次第に困窮していったということである。
息子も無戸籍だったので、学校や仕事などをどうしていたかは記載がないので分からないが、弱っているところを保護されたと言うから、世間の人並みの生活は出来ず、母親と一緒に家にいたのではなかろうか。家の近くの人は誰も母子が無戸籍だと言うことは知らなかったようである。
過去に高石市への相談はなかったそうで、夫が所有していた家は「無人」扱いで、上下水道料金は市が徴収していたが、市では実態を把握しておらず、おそらく相談すれば、家を退去させられるかも知れず、隠れるように暮らし、相談体制にも乗らず、生活保護も受けていなかったのではなかろか。
今でもこのような深い戦争の傷跡を背負ったまま、社会にうまく適応も出来ず、誰の助けも借りずに、孤立してひっそりと一生を過ごさざるをえなかった不幸な人が居られたことを改めて認識し、我々社会は心を尽くして反省すべきであろう。
無戸籍者は全国で約1万人とも指摘されているそうである。今の日本で同時代を生きている人に餓死者が出るなど、この社会の恥である。何とか無戸籍の人に直接会って、救いの手を差し延べられなかったものか、亡くなられた人のご冥福をお祈りすると共に、社会は大いに反省し、将来の教訓とすべきである。
あまりにも、我々の日常生活とかけ離れたことが、現実にあったことに驚くと共に、未だに、社会の片隅には戦争の傷跡が残っていることに深い痛みと苦しみを感じた次第である。