兵庫県の斉藤知事が兵庫県議会の不信任決議で辞職に追い込まれたのに、すぐ後の選挙で返り咲いたのにはただ呆気に取られてしまった。
議会内の争いで不信任されたのが、すぐその後の選挙でひっくり返されたような経緯ではなく、全会一致で不信任を突きつけられて辞めさせられた知事が、すぐにまた選挙で復活することなど想像すら出来なかったのが、現実となったのだから驚いても当然であろう。
しかし似たようなことが東京都知事選、名古屋市長選や衆議院選挙でも見られ、これらはSNSの流行が作用しているのだと言われているようである。「フィルターバブル」という現象が話題になっているようだが、インターネット上では、まるで「泡(バブル)」の中に包まれているように、自分の見たい情報しか見えなくなる状態を指すのだそうである。
インターネットの情報は、一回でも見るとクリック履歴や検索履歴が残ってしまう。だから、どんどん同じようなサイトが画面に出てくることになる。アルゴリスム(コンピュータが情報を処理する際の手順)によって、その人が興味を持つであろうトピックスが推定され、見たくなさそうな情報が遮断されることになる。
たしかに、SNSに上がってくる広告をクリックすると、その後、関連商品の広告ばかり出てきてうんざりすることがある。その人の属性や好みに合わせた情報を提供するように、勝手にパーソナライズされるわけである。広告だけでなく、あらゆるインターネットサービスの情報がパーソナライズされている点に注意するべきであろう。
たとえば、ユーチューブを検索してニュースを知り、続けて表示される関連ビデオを見るという人も多いであろう。そうやって自らリサーチすれば、「多様な情報、意見を知ることが出来た」と納得感が得られるかも知れないが、自分のところに集まってくる情報は、自分の見たいものだけに限定されている可能性が高いわけである。
一回見ると同様のコンテンツがいくらでも流れて来る。自分の見ている情報が世論なんだ、と考えるようになっても不思議ではない。
こういう「フィルターバブル」を意識的に利用し、画策すれば、世論を意識的に誘導することもある程度可能なのではなかろうか。ことに若い人などでは新聞などの活字媒体を見ない人が多くなってきているので、なおさら影響が大きいと思われる。
今度の兵庫のやり直し選挙でも、斉藤知事にはあるコンピュータのソフト会社が選挙戦を全面的に請け負っていたようである。斉藤知事を直接非難することより、この傾向がやがて新しいファシズムに繋がりはしないかと危惧するのは私だけであろうか?ヒットラーも選挙で選ばれたのである。