仕事や学校に行けず家に籠り、家族以外と殆どの交流がない状況が6か月以上も続いた場合を引きこもりと言われるが、原因は様々で通常は10代後半から30代ぐらいの若者に多いとされていた。
しかし、こうした引きこもりはそのまま長期化しやすく、最近では厚生労働省の調査によると、40歳から64歳を対象とした年齢層が推計で61万3,000人と、15歳から39歳を対象にした推計の54万1,000人より多くなっているそうである。これを8050問題と言うそうである。
そんなところに、川崎市での児童殺傷問題の犯人が51歳の引きこもり男性であり、それに引き続いて起こった、元農林次官の息子殺し事件でも、引きこもり息子の問題ということで、にわかにこの問題が注目を集めるようになり、中高年の引きこもりが犯罪予備軍のような見方をする人さえ出てくる有様である。
引きこもりの原因は色々で一概に言えないが、多いのは「病気」とか「いじめ」その他」であったり「職場に馴染めなかった」などというもののようであるが、一旦引きこもると社会との接点が少なくなり、長期化する傾向にあるようである。
その結果が8050問題などと言われる訳で、親が80歳で子が50歳で引きこもりという問題のようである。この対象となる年代の人は丁度、就職氷河期と言われた2000年前後に大学を卒業した頃の世代にあたり、希望通りの就職が出来ず、中途退社したりしている人が多いことも関連していると考えられる。
多くは80歳ごろの親と同居する未婚の子のみ世帯となっており、親が歳をとって、健康上あるいは経済的な理由によって、親子ともども社会から孤立し、生活に困窮することになったり、親が亡くなると、残された子が経済的に困窮して生活が出来なくなることになったり、孤独死などにも繋がりかねないことになる。
最近はようやく、国も「就労準備支援・引きこもり支援の充実。地方自治体やハローワークと連携し、相談窓口業務や自立支援、就業支援、引きこもりに関する啓発活動など」の対策も取っているようだが、世間体を気にして、親が子の引きこもりを隠してしまうことも多く、殊に中高年世代の引きこもりについては未だ詳しい実態も掴めていない実情のようである。
ただ、この8050問題は放置すると、やがては9060問題に移行することになる。その頃になれば、高齢者の数も急増し、介護制度の維持も今より困難になることも明らかである。もう親子共々健康の面からも、経済的にも立ち行かないことになりかねない。
共倒れか、親は亡くなり、子も引きこもりで60歳ともなれば、健康問題も生じてくるであろうし、最早、無職の年月の長かった老人には仕事の機会もなくなり、ますます孤立し、生活困難を来すことになるであろう。このままでは彼らの未来は暗黒である。
ただでさへ少子高齢化で人手不足の時代である。その社会にとって中心的な働き手となるこの世代の人たちが働かないで引きこもっていることは、本人の問題だけではなく、社会にとっても大きな損失である。
もっと積極的な引きこもり対策を立て、困難であろうが、こうした長期引きこもりの人達にも、社会との接点を回復して貰い、彼らが少しでもより有意義な人生を送れるようにするとともに、それぞれの能力を活かし、有用な労働力としても、少しでも社会に貢献出来るようにする施策を早急に進めるべきではなかろうか。
8050問題の対策事例
厚生労働省は2009年に「ひきこもり対策推進事業」を創設し、全国66ヶ所に「ひきこもり地域支援センター」を設置しました
「ひきこもりサポーター養成研修事業」も実施。厚労省は「就労準備支援・ひきこもり支援の充実」
2018年、のための費用として新たに来年度予算13億円を計上。ひきこもりとなっている中高年者に対して就業支援を行い、自立を促す体制を強化する方針です。
一方で、「就業支援だけでは不十分」「学校や企業になじめずにひきこもりとなってしまったケースが多いため、社会全体が変わらなければ根本的な解決にはならない」と指摘する専門家もいます。
内閣府の『平成22年版若者白書』に掲載されている「若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査)」によると、ひきこもりになったきっかけで最も割合が大きいのが「職場になじめなかった」と「病気」です。次いで「就職活動がうまくいかなかった」「人間関係がうまくいかなかった」といった理由が並んでおり、ひきこもりを社会全体の問題と捉えなければ改善は難しいのかもしれません。