ホームの白線と視力障害者用ブロック

 昔は何処の駅のホームでもアナウンスで「電車が来ます。危ないですから白線の内側へお下がり下さい」と放送されていたものである。「内側」だったら、電車の入り口に近い方と言う風に取る人もいるかも知れない。「白線より後ろへお下りください」といった方が良いのではないかなどと話したことがあったことも思い出した。

 しかし、いつ頃からか、大抵のホームでは、白線に沿ってそのすぐ内側に、視覚障害者用の黄色いブロックが敷かれ、やがて、多くのホームから白線がなくなり、黄色いブロックだけになった。駅のアナウンスも「電車が来ます。危ないですから、ホームの中寄りにお下りください」と言うことが多くなったようだが、中には、「黄色い線より後ろへお下りください」と言うところもあるようである。

 私は視力障害者用のブロックが出来た時に、こんなホームの端を目の悪い人に歩かせては危険ではないかと思い、当時どこかに投書したこともあったが、未だに、何処もそのままで、黄色いブロックがまるで白線の代わりに安全地帯と危険地帯の境界線のようになっている。

 目の悪い人たちの安全のためなのだから、安全と危険の境界線を歩かせるようなことは言語道断である。黄色いブロックを敷くのだったらもっとホームの中程に引いて、そこから所々に乗車口へ向かう支線を引くなりして、安全に視覚障碍者を誘導すべきではなかろうかと今でも考えている。

 その方が複雑になるので、ホームの混雑など人の動きからは、実用化の点では劣るかも知れないが、安全第一を優先すべきであろうから、やはり視覚障害者用の黄色いブロックの線をホームの端に引くことには反対である。ブロックの上はデコボコがあって歩き難いし、ふらつき易い。目の悪い老人が杖を頼りにそのブロックを頼りに歩いているのを見ると、本人がどう感じているのか分からないが、傍目には、やはり危なっかしい感じがして、ホームから落っこちないか心配になる。

 現実にも、視覚障害者のホームからの転落事故は時々あり、新聞によれば、統計を取り始めた2010年度から10年間で、視覚障害者がホームから落ちたり、電車と接触したりした事故が749件あり、うち17件が死亡事故だったそうである。中には、失明した研究者で、自らが最初の被験者としてして、視覚障害者の移動を研究していた人がホームからの転落事故で亡くなられたという痛ましい事故もあったようである。

 こういう不幸な例を断つために、最近は多くの駅でホームドアの設置も進んでいるが、費用がかかるので、なかなか普及せず、20年3月現在で、まだ約9%しか進んでいないと言うことらしい。ホームドアがあれば安全であるが、それが普遍的になるまでは、やはりホームの黄色いブロックの線はホームの端から撤去して、もっと視覚障害者が安全に歩ける場所へ、貼り変えるべきだと思うがどうであろうか。