菅首相の訪米

 4月16日菅首相は訪米して、ホワイトハウスでバイデン大統領と会談した。大統領が就任してから初めての外国首脳との対面の会談で、日本が重視されている印だなどと盛んに喧伝されていたが、往復14時間もかかって飛んで行って、一対一の会談はたったの20分だけで、日本側は夕食会を望んだが、それも断られ、20分の対面の時にハンバーガーが出されただけで、手もつけられなかったということである。

 菅首相を乗せた飛行機はアメリカの空軍基地につき、随行員も首相官邸のスタッフだけで、会談も短時間ですみ、何だか呼びつけられて、馳せ参じたと言うような印象を拭いきれない。

 その上で、アメリカの中国の覇権主義に反対し、ウイグルや香港の人権問題を非難し、台湾の問題にも触れ、日本独自の考えを強くは主張する事も出来ず、すっかりアメリカの政策に乗せられた印象である。

 中国は言うまでもなく、人口14億の隣の大国で、近年の躍進も素晴らしく、GDPも今や日本の3倍近くもあり、経済的には最大の貿易相手国でもある。最早、中国なしには日本の経済が成り行かない隣国になっているのである。当然、日本はアメリカとは違った、日本独自の中国に対する利害関係があり、台湾についても、台湾が中国の一部であることを認めてきているのである。

 アメリカは中国の躍進が、自らの覇権をも揺るがしかねない恐れを感じ、クワッドと言われる日本、オーストラリア、ニュージーランドにインドまで加えて、対中包囲網を形成しようと画策しているのだが、日本は中国とも仲良くしないとやっていけないことも知っておくべきであろう。

 それにもかかわらず、今回の日米共同声明などを見ると、どうも全てアメリカに同調させられ、中国に反対する危険を冒してしまった恐れが強い。すでに危険なルビコン川を渡ってしまったと言う人もいる。

 アメリカはアジアにおける前線基地として日本を利用したいのであり、それに取り込まれてしまうと、アメリカの前衛部隊として利用されることになりかねない。いざと言う時には、アメリカの手下の同盟国として、最前線で戦わされることとなり、不利とあらば、米軍は前線基地は放棄出来ても、日本はとことん犠牲にされかねない。太平洋戦争時のフイリピンを思い出すと良いであろう。

 現時点で、危険を冒してまで日本が中国と戦わなければならない必然性は何もない。それより友好関係を進め、経済的な利益をうる方が比較にならない優れた選択肢である。日本はここで、はっきり中立的な立場を確立して、米国の覇権闘争からは一歩離れておくべきである。日本の未来の発展のために、ここが正念場である。そう考えると、今回の菅首相の訪米外交はあまりにも情けない。ここらで日本も真剣に将来を考えるべきであろう。

 序でに言えば、今回の首相の訪米によって、コロナワクチンについて菅氏はファイザー社のCEOへの電話の結果、九月までには全てのワクチンが調達できる目処がついたと言ったが、どうもファイザー側は「日本政府と緊密に連絡してやっていく」と言うだけで、何も確約されたわけではないらしい。すぐ後から、下村政調会会長がワクチンは来年までかかると言い、後の記者会見で首相は質問に答えなかったなど、どうも確約があったのではなさそうである。

 コロナ対策といい、外交政策といい、菅首相には荷が重すぎるのではないかと疑われることばかりである。