薬の楽しみ

 

 最近の薬はほとんど皆ヒートシールに包まれている。錠剤が1錠づつアルミとプラスチックのシールの中に入れられているのをPress through Pack、略してPTP包装、粉薬など1回分づつがアルミの様な袋に入っているものをStrip、略してSP包装というらしい。

 今私が飲んでいる血小板を増やす薬もPTP包装になっているが、一錠分が普通よりはるかに大きなヒートシールになっている。普通の薬なら指で押し出して飲んだらおしまいというところだが、大きいので錠剤を取り出したあとすぐに捨てるのはもったいない様な気がする。捨てられないで残った殻を眺めていると丸い膨らみが顔の様に見えてくるし、押さえれて歪んだ表面が色々なことを想像させてくれる。

 薬を飲む環境は概ね暇であるし、つい子供の頃からの”テンゴ”の癖が出て、落書きでもしたくなる。ちょうど錠剤の抜けた後は丸く顔の様であるし、押さえられて歪んだ表面が目や口に見えたりする。手近にあるマジックインクで適当に色をつけたりすると顔や人の形になる。

 薬は忘れない様に定時に飲むので、その度ごとに材料が出来るので順繰りに細工を施していくと、”テンゴ”はどんどん拡がっていき、大勢の人物が生まれてくる。

 それを並べてみたのが上の写真である。薬で効果を夢見るとともに、テンゴの人間が増えていくのも楽しみになってくるというものである。ただでは薬は飲まない。効果も期待したいが、出来れば楽しみながら飲みたいものである。