エスカレーター事故

 先日市立池田病院に検査の検体を持って行った時のことである。この病院の正面入り口は入るとすぐにエスカレータと階段があり、地面から1ないし1.5米位高いに所が1階になっている。私がいつも行く時には、トライウオーカーなる歩行補助器を使っているが、いつも登りはエスカレーターを使い、下りは端の方にあるエレベーターを利用していた。

 登りはウオーカーをエレベーターに乗せ、ハンドレールを持って上がれば問題がないが、下りは、ウオーカーを畳んで小脇に抱えるかしなければならないので、エレベーターに乗っていた。

 ところがその日はエレベーターの横に立っている係員に、エレベーターを利用する様言われた。親切に言ってくれたのかと思ったが、短いエスカレーターなので、それに乗った方が便利なので、「いつも乗っているのに・・」と言ってそのままエスカレターの方に進むと、係の人が血相を変えて「駄目です。エレベータに行って下さい」という。

 いつも何も言われないのにどうしたことか。この係の人だけが厳しいのだろうかと一瞬思ったが、そうではなかった。忘れていたが、前日何処かでカートを持った女性がエスカレータで転倒し、手摺りのレールと床の間に首を挟まれて死亡するという事件が報じられていたことを思い出した。

 恐らく、そんな報道に接して、老人などの受診者の多い病院でも安全対策として、カートや歩行器を持った人はエスカレータに乗せず、エレベータを利用させることにしたのであろう。係の人の真剣な表情が思い出された。

 たとえ倒れたからといって、手摺りのベルトと床の間に首が挟まれて死亡事故につながるなど考えてみたこともなかったが、そういうこともありうるらしく、新聞報道によると、事故は転倒によるものが最も多いらしく、ことに60歳以上の高齢者に多いとのことであった。少し古いが18年から19年にかけての2年間の事故件数は1,500件に及び、2004年からの10年間での死亡事故が7件もあったそうである。

 上着の一部が手すりに挟まれたのがきっかけで事故になったとか、巻いていたストールが挟まれて首が絞められたとか、車椅子が降り口の段差に引っかかって、載っていた老婆と押していた爺が共に転倒して転げ落ち、おまけに後ろにいた女性まで巻き込んで、死亡したという痛ましい事故もあった様である。

 その他、エスカレター上で転倒し、転落死した例、手すりに腰掛けようとして後ろ向きに手すりに持ち上げられて転落したり、子供が手摺りから転落死などが含まれている。

 特に駅のエスカレータなどを見ていると、ステップを歩いたり走ったりして上り下りしている人や、人の間をすり抜けて急ぐ若者なども多いが、やはりエスカレータは機械である。注意して利用しないと、危険も潜んでいることをつくづく感じさせられた。

 手摺りには必ず捕まって乗り、走ったり歩いたりしないことが基本であろう。ベイビーカーや車椅子は乗せないとか、黄色い線の内側に乗る、衣服の裾などが巻き込まれない様にするなどの注意はやはりいつも守るべきであろう。

 平素は何も考えずに気軽に利用しているが、エスカレーターが急に止まって多くの人が巻き込まれた事故もあったことだし、機械を利用する時は、それなりの注意を払うべきことを教えてくれたものの様である。