サプリメント

 今日の様に社会のあらゆる分野の隅々まで資本主義が行き渡り切ってしまうと、その中で金儲けをして生きていくには、最早、衣食住といった人々の普通の基本的な需要に応えるだけでは、もうどこを見渡しても飽和し切ってしまっており、どこかに間隙を見つけて需要を掘り起こし、新たな需要を作って行かねば商売にならなくなっている。

 そんな間隙として入り込みやすいのは、人々がなくても良いが、あったら便利かな思うようなところであろう。実際アマゾンなどの広告を見ているとそんなものばかりである。生活周辺の電気製品やレジャー用品など、ありとあらゆる、どうでも良い様な物品の広告がぎっしり並んでいて、競争の激しさが分かる。

 そんな中でも、より多くの人たちの関心をを惹きつける分野となると、人の弱みに漬け込む商売である。中でも人の健康に関するものがよい。誰しも完全無欠な体を持っている者はいない。それに、誰しも年をとるし、どこかに弱みを持っている。それに社会的にいろいろなストレスにもさらされるので、誰しもどこかに不安を抱えている。それに高齢化の時代であり、不安の時代でもある。

 そんなことで最近盛んになってきた大きな市場は健康関連の分野である。運動器具から運動着、運動靴、健康増進具、健康補助具、野外用品など健康関連物質の販売、スポーツ施設やジム、レジャー用品なども大きな市場であるが、もっと直接身体に働く所謂サプリメントの類から化粧用品の類なども、人の弱みに漬け込むわけなので、より大きなチャンスを与えてくれることになる。

 サプリメントと言っても幅が広い。医用薬品に近いものから化粧品や食品に近いものまである。その内容は豊富で、法令上の区別ばかりでなく、種々の分類や呼称がある。医療用医薬品以外の一般人が薬局で普通に買える市販薬をはじめとして、保健薬、医薬部外品などと言われるものから、健康機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品、健康増進剤、健康飲料、栄養補助食品、栄養強化食品、健康補助食品、保健用食品など機能の違いも曖昧な、名称もまちまちで、薬品に近いものから食品や化粧品に近いものまで種々雑多なものがある。

 こう言ったものが売られるのは良いが、一つ一つの掲げる効用は医薬品と違って弱く、副作用も少ないであろうが、製造過程で医用薬品ほど厳密には効果も副作用も検討されていない。むしろ心理的効果の方が大きい様なものばかりであるが、その結果が最近問題になっている小林製薬の紅麹によるコレステロール低下を狙った健康補助薬である。

 それについてはここでは触れないが、こう沢山の種類のものが出揃うと、あれもこれもと併用する人の多くなることも充分考えられる。一つ一つには問題がなくとも、違った種類のものを多くの服用するとなると、その併用による思わぬ危険性も考慮しなければならなくなるのではなかろうか。

 一つ一つについては責任を持てても、多くの出所からの多くの品物の併用については、すべてのものが同一の人体に入るのだから、当然全体としての作用、副作用をも考慮に入れなければならないが、それについては誰も責任を負わないことになる。

 サプリメントだからといって、良さそうなものをあれもこれもと併用している人も多い。現に私の友人を介して知っているある男性がサプリメントを20〜30種類も常用していると聞いて驚かされたことがあるが、広告に乗せられれば、あれもこれも良さそうで、いくらでも併用したくなる可能性も充分考えられる。

 サプリメントが人の弱みに漬け込む性質のものであるだけに、全体としての人体への影響を考える責任を誰かが取るべきではなかろうか。