台湾をめぐる代理戦争

 ここのところ、G7の外相会議でも「ロシアの即時撤退」を共同声明で出すとともに、中国についても、「力や威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する」と打ち出しており、緊張を高めようと躍起になっている感じである。

 しかし、少し冷静に考えてみると、中国が日本に脅しや圧力をかけている様子は何処にもなく、もっぱら、米国が主導して台湾問題を取り上げて、台湾海峡の平和だなどと中国を非難し、それに日本が同調させられているのだということがわかる。

 日本は田中角栄首相がわざわざ中国へ行って、一つの中国を認め、台湾は中国の一部であるとして、以後、台湾との公式な外交関係さえ止めたのであり、仮に、万一、中国が台湾を武力で攻撃したとしても、それは中国の国内問題であり、外部の国が介入して台湾に加勢するべき問題ではないことは明らかである。

 それ以外に、日本が中国と戦わねばならないような矛盾は、日本と中国の間にはない。それどころか、中国は日本にとっては最大の貿易相手国であり、中国なしに日本は生きていけないことを知るべきである。尖閣諸島の問題を挙げる人もいるであろうが、国境線に関わる問題はどこにもあることで、承知のように韓国やロシアとの間にもあるが、いずれも外交的に処理出来る問題で、戦争までして争うような価値のある問題ではない。

 中国は古くからの隣の大国であり、今や経済規模は日本の4倍、人口は10倍もあり、仮に戦っても勝てる相手ではなくなっている。嫌でも善隣友好で共存して行くよりない隣国なのであり、小さな矛盾があったとしても、十分共存共栄していける国である。

 それにもかかわらず、最近になって日本は急に南西諸島に次々と多くの軍事基地を作り、自衛隊が敵基地への先制攻撃まで可能とするように憲法解釈まで変え、アメリカからミサイルを買うなどして、予算もないのに軍事費を大幅に増強して、「新たな戦前」と言わしめる程に緊張ムードをも高めているのである。

 これは明らかに異常な事態であるが、中国が日本に圧力をかけているからそれに対応したものではなく、アメリカが中国の発展を抑えるために、前線基地としての日本を利用するために圧力をかけているために起こっている事態である。

 アメリカの属国である悲しさ、日本はアメリカの言うことを聞かねばならない。アメリカにとっては中国の発展が我慢ならないのである。アメリカも一つの中国を認めている弱みがあるので、それを認めた上で台湾問題につけ入ろうとしているのである。

 ロシアのウクライナ侵攻が起きた時、アメリカはまるでイラク戦争などなかったかのように、国連無視のの侵攻だとロシアを非難し、NATOとともにウクライナに武器を供給してウクライナに「代理戦争」をさせることにしたが、その時、次はアジアで台湾をめぐる「代理戦争」だという声が飛んだものであった。

 アメリカはイラクアフガニスタンの戦争の失敗に鑑み、直接自国の軍隊を使うより、他国の軍を援助して戦わせる「代理戦争」の有利さを学んだようである。ウクライナの戦争では、自国の兵士は傷つかず、軍需産業や石油産業は笑いも止まらぬ大儲けをしているのである。

 当然、次のアジアにおける対中国の戦争では、傀儡国の日本や韓国に戦わせ、武器や石油などの後方支援をアメリカが引き受けることにするのが賢明だということになるのであろう。こうすれば戦の範囲を限定出来、世界戦争の愚を避けられるし、たとえ形勢不利となっても、被害を受けるのは日本や韓国であり、米国は基地などいつでも放棄出来るし、米軍の損失も少なくて済み、本国での批判にも対応しやすいこととなるであろう。

 日本はそれをいかに潜り抜けて、戦いを避け、将来の平和とアジアの発展に結びつけられるであろうかということが問われるのではなかろうか。