映画「ガザ 素顔の日常」

 いつも行く宝塚の映画の小劇場で表記の映画をやっていたので見に行って来た。いつ撮られた映画かわからないが、今回のイスラエルの全面的なガザの破壊やジェノサイドが起こる以前のガザの人々の日常生活を記録した映画である。

 当時、すでにハマスガザ地区を掌握し、2007年以降イスラエルガザ地区を壁で囲い込んで封鎖し、物資や人の移動を禁止したため、物資は不足し、移動の自由もなく「天井のない監獄」と呼ばれる様になってからのこの地区の記録である。

 南北に約100キロ、東西に10キロばかり、東京23区の6割ぐらいの狭い場所に、約200万からの人々が暮らしているのだが、パレスチナの他の地方から土地を奪われ難民キャンプなどで暮らす人たちが7割を占めるという状態なのである。その中では当然生活も苦しく、しかも、イスラエル軍による攻撃は今回が初めてではなく、2014年、2018年にも繰り返され、これらの戦争では多くの学校、病院、家屋、発電所などが破壊され、多くに人命も失われて来たのである。

 そんな中でも、このガザ地区に住み続け、それでも日常を強く生きようとする人々がいることにまず驚かされる。何度も繰り替えし荒らされているが、それでも人々にとっては古くからの故郷であり、苦しいながらも、案外普通に暮らし続けているのである。

 この地区は美しい地中海に面し、気候も温暖で、花やイチゴの名産地でもあり、若者たちはサーフィンに興じ、ビーチには老若男女が訪れる。カフェで幸せな一日を送る人もいるし、タクシー内で歌うラッパーなどもいる。個性豊かな人たちが住み、海外留学で国際法政治学を学びたいとするチェロを奏でる女性や、大きな漁船の船長になり兄弟とともの漁に出ることを夢見ている少年も出てくる。

 しかし海上イスラエル海軍が封鎖し、今は漁業活動もままならない。ただ、一夫多妻の国なので子供が二十人もいる人もおり。貧しいながらも家族が集まって暮らしている。子供たちは友達と一緒に駆けずり回って遊んだり、勢いに乗ってイスラエルに向かって投石したりもする。イスラエル軍はそれに実弾で仕返しをする。怪我人が出る。ハマスの救急制度が充実しているらしく、至る所で救急車が出てきて怪我人を運び、手当てをしているのが映し出される。

 皆の望みは今は叶わぬ平和と普通の生活であり、それを夢見て強かに生きている人々の姿に思わずエールを送りたくなるルポルタージュ映画である。

 ところがこの世界は、今度は今までになかったイスラエルのジェノサイド攻撃にさらされている。ここに出てきた人たちはどうなったのか気になる。今や、ガザは完膚なきまでに破壊され、二万人以上もの死者を出し、中でも子供の犠牲が多いと言われている。どうして子供がこんなに多いのか初めは疑問だったが、この映画を見ると子供の犠牲者の多いこともわかる。この映画の当時から石を投げただけでも、子供でも殺されたり、拉致されたりされるのが普通の様であったらしい。

 更に、昨今の報道でも、やたらとハマスの救急車が出て来るが、ハマスが住民の救急対策に力を入れていることがよく分かり、ハマスが欧米のいうテロ組織ではなく、住民の支持を得た組織であることがわかる。

 この映画に出てきた人たちの無事息災を願うとともに、南アフリカインドネシア政府からも告発されているイスラエルパレスチナへのジェノサイドに対して、人類の名において怒りを表明したい。