時代の変化

 イスラエルハマスの衝突で、イスラエルガザ地区への連日の空爆で多くの市民が犠牲になっている。元々パレスチナの人々が住んでいた所にイスラエルユダヤの聖地だと言って建国し、次第にパレスチナ人を追い出して行って領土を広げて行った歴史が原因で、紛争がずっと続いてきた地域である。

 今回はガザ地区の実効支配者であるハマスイスラエルを攻撃したことがきっかけとなり、イスラエルがこの際ハマスの壊滅を目指して大規模な戦争を開始し始めた様である。狭い地域に220万からのパレスチナ住民が住んでいるガザ地区に、イスラエルは地上部隊を入れて占領し、ハマスを根絶させようとしていると言われている。

 この紛争が始まるや否や、ユダヤ人に牛耳られており、自らの係累にもユダヤ人のいるバイデン大統領は早速イスラエルに飛び、ネタニヤフ首相に会い、アメリカは全面的にイスラエルをバックアップすると約束している。

 一昔前のイラク戦争アフガニスタン侵略など中東に深く関与し、世界の警察官として君臨していた頃のアメリカなら、単にイスラエル支持にとどまらず、ハマス非難一色で多くの国に同調させ、国連でもハマス非難一辺倒の反応を押し通したところであろうが、アフガニスタンからの撤退以来中近東におけるアメリカの関与が薄くなったので、バイデン大統領は慌ててイスラエル指示を表明しなければならなかったのであろう。

 最近は中国の発展により、アメリカは何とか中国を抑え、アメリカの優位を維持しようとし、ロシアのウクライナ侵攻に対しても、NATOなどに呼びかけて、ウクライナの軍事支援を押し付けたりしているが、ロシアに対する制裁も実効が上がらず、アメリカの中近東戦略の失敗の上に、BRICSなどの国々の発展もあり、今やアメリカはかっての勢いを消失しつつある様に思われる。

 今回の国連での動きを見ていても、世界の変化をつくづくと感じさせられる。安全保障理事会でブラジル案での停戦決議が行なわれたが、12ヶ国が賛成したのに、アメリカはハマス非難がないからという理由で、拒否権を使ってこれに反対したのである。昔なら色々な問題があるごとに、アメリカが主導して国連常任委委員会にはかり、ソ連がいつも拒否権を使うというパターンが多かったが、今やアメリカが少数派になって拒否権を使わなければならなくなったのである。

 さらに国連の総会でも、カナダ案でアメリカの主張を通そうとしたが、88ヶ国の同調しかえられず、3分の2に届かず可決できず、逆に、ヨルダン提出の「人道的休戦の議決」が、171ヶ国中121ヶ国の多数で可決され、アメリカは僅か14ヶ国の反対しか得られなかった。

 アメリカ主導で導入され、色々な場面でアメリカの思惑の世界を擁護するために使われてきた国連も、今やアメリカの思うようには動かなくなってしまっているのである。もはやアメリカの時代は凋落に向かい、新たな世界が作られつつあることを感じないわけにはいかない。