世代の長さ

 今年女房が九十歳になる。そう思っていたら、昨年帰国して近くに住む様になった下の娘が今年還暦を迎え、その子のアメリカにいる孫が三十歳の誕生日だという。丁度90、60、30と綺麗に30歳間隔で並ぶことを知った。

 但し、この順でいけば、今年には曽孫が生まれなければいけないことになるが、孫はまで独身で結婚する気配も見せていないので、次の30年はもう続かない。

 昔、我々の若い頃には、一世代はおよそ25年と判断したものであった。我が家も、母の生まれが1902年で、長女の姉が1924年生まれ、私が1928年生まれなので、おおよそその線を行っている。私の後も、長女は今年64歳になるので、一世代25歳の線からそれほど外れているわけではない。

 その頃は、クリスマスなどが持ち出されて、24歳ぐらい迄が婚期で、それを過ぎるともう婚期を逃した「いかず後家」などと陰口が囁かれる様になったものであった。そんな時代だったので、父が九十歳を過ぎた頃「友人たちには曽孫がいるのにうちには曽孫がいない」と嘆いていたことがあった。

 当時は子供も多かったので、80歳も過ぎる頃になると老人は正月などで家族が集まる様な時には、大勢に子や孫、ひ孫にまで囲まれて、楽しそうに記念写真に写ったりするものであったが、もう今ではその様な写真を見ることもない。もう10年にもなろうか。まだ80代の頃、小学校のクラス会で、昔の旧家の友人が自慢そうに大勢の家族に囲まれて、真ん中でにっころ微笑んでいる写真を見せられた思い出がある。

 人々の婚期が遅れ、少子化が進み、人口が次第に減少し、社会の活力も衰えていく。日本だけの話でなく世界中に見られる現状である。どう見ても高度に進んだ資本主義社会の失敗の結果であろう。人類はどこへいくのであろうか。