80歳代と90歳代の違い

 現在の日本では 老人とはおよそ60歳ないし65歳より上の人たちを指すことになっており、75歳以下を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者などとして呼ぶことが多い。

 しかし95歳の私から見ると、個人差は歳と共に大きくはなるが、60代、70代はまだ老人の序の口である。そこそこ歳はとってもまだ多くの人が元気である。退職していても、まだ体力も気力もあるので、それぞれに自由な時間を楽しんでいる人が多い。まだ仕事を続けている人も少なくない。外国旅行へ行くのもこの年代が多いのではなかろうか。

 人々が本当に体力的にも気力的にも衰えを感じ始め、生活の仕方も、仕事を辞め、昔からの老人の隠居生活のようになって行くのは、人による違いも大きいが、今では概ね80歳を超えてからぐらいではなかろうか。

 そういう実態を見れば、今の時代では、本当の老人と言えるのは、80代以降のことになると言っても良いかも知れない。それでも、私など80代にはまだ毎日のように軽い仕事は続けていたし、趣味の集まりや旅行なども相変わらず続けていた。

 しかしいくら元気だと思っていても、年々歳は争えなくなって行くのはやむを得ない。90歳も超えていくと、やはり世界は変わってくるものである。私の場合は87歳に心筋梗塞をやったが、幸い軽くて済み、2−3ヶ月で元に復し、仕事もわずか続けていたが、91歳の秋に脊椎管狭窄症にかかり、回復する前に、すぐ後からコロナが流行り始め、その両方で、仕事もやめ、行動範囲がぐっと狭くなり、そのまま続くことになってしまった。

 以来4年、今や95歳になってしまったが、同じ老人でも80歳代と90歳代では、コロナがなかったとしても違うものである。

 80歳代には、まだ昔からの友人がおり、老人たちが集まって旧交を温める機会が楽しめたが、90歳を過ぎると、そう言った友人が皆死んでしまっていなくなってしまい、孤独を感じさせられるのが一番の問題であろうか。

 それに自分では変わらない積もりでいても、体力が衰える、動きが遅くなる、疲れやすくなる。何をするにも時間がかかる。階段の手すりが有難く感じられるようになる。それにバランスを崩して倒れやすくなる。それまで続けていた運動も基準を下げなければならなくなる。

 体力ばかりではない。五感も鈍る。視力が衰え見間違いが多くなるし、聴力低下で聞き違いも増える。但し、物は考えようである。体は次第に思うようにならなくても、それなりに楽しむ方法はあるものである。

 別項で書いたように、悪くなった視力も聴力も、それなりに楽しむ方法もあるし、時間があるのでボツボツとキーを叩いてでも、昔の思い出や、世を儚むブログを書くことも出来る。若い時と違って、何をするにも時間がかかるのですぐに一日が過ぎてしまう。そのため、90歳代を半ば超えても、まだ結構忙しく一日一日が瞬く間に消えて行くのである。