酷暑日

 今年はまだ6月だと言うのにもう体温を越えるような猛暑が続き、これでは7月、8月の本格的な夏にはどうなることか心配になる。

 群馬県・伊勢崎市では6月25日に既に40.2度、6月の気温としては2011年に埼玉県熊谷市で観測されて39.8度を上回る国内最高の記録を更新し、初めて40度を越えたのだそうだ。7月に入ると更にひどくなり、1日には名古屋で40度、大阪37度だったという。全国では、6地点の観測点で40度を超え、1日としては最多だったそうである。

 昔、我々が子供の頃は、今のようにクーラーもなかったので、暑い時には裸になったり、水をかぶったり、海水浴に行ったりなどしていたが、30度が一応の暑さの目安であった。それを超えたら今日は暑い、29度までなら、まあまあ我慢出来る暑さかなと言うぐらいの感じであった。

 今でも覚えているのは、中学三年の夏休みの時に、先輩の当時の海軍兵学校生徒が、夏の軍服に短剣をぶら下げた正装で、兵学校の勧誘にやってきたことがあった。その時の制服は、真夏というのに、詰襟の白い制服であった。勿論、汗だくだったが、正式の母校訪問なので、平然と振る舞っていて、さすがだなあと感心したものであった。今なら到底出来そうもないことであろうが、当時は真夏でも30〜32度ぐらいが最高温度だったのではなかろうか。

 またその頃、友人達と話したのを覚えているが、アラビアでは外気が40度以上にもなり、体温より外気温のほうが高い。そうなると、暑いからと言って裸になるのは返って良くない。体温より暑い外気にさらされるのだから何かを着て外気を遮断したほうが良いのだ。だからアラビアのローレンスなどアラビアの人たちは長い衣装で体を覆っているのだなどと、事実は知らないが勝手にいい加減な想像を逞しくして話したりしたものであった。それが現実のことになるなど思ってもみなかったことである。

 それはどうあれ、今の連日の暑さは本当ににどうにかならないものか、助けてくれと言いたくなるぐらいである。今まだ7月になったばかり。これが2月も3月も続いたら、果たしてそれまで体が持つだろうとさえ思う。エアコンをつけていると気持ちが悪いし、消せば蒸し暑くてたまらなくなる。窓を開けても外の暑い空気が入ってくるばかり。体はぐったりする。

 人新世で、炭酸ガス濃度が増えたためかどうかはわからないが、地球の温暖化が進んでいることは間違いないようでる。五十年先のことではなく、もっと近い未来のために、広範で少しは有効な基本的な暑さ対策を考え、実行してみなければならないのではなかろうか。

 気象庁の発表では25度C以上を夏日、30度以上を真夏日、35度以上を猛暑日と言うらしいが、こうも40度C以上が当たり前に見られるようになると、40度C以上にも「酷暑日」とか何とかつけてはどうだろう。

 ただそれよりも、40度以上などは平に御免被りたいものである。昔は冬の寒さにやられて死ぬ老人が多かったものだが、今後は夏こそ老人にとっては過酷な季節となろう。熱中症その他で、冬以上に死ぬ老人が増えるのではなかろうか。

 まだ生き残っている九十代や百歳超えの老人たちよ、電気代や電力事情などを無視して、エアコンをつけっぱなしにし、水分を十分とって、よく眠り、よく楽しんで、どうかこの暑さを何とか乗り切って欲しいものである。