ゴールデンウイークの河川敷

 今年もゴールデンウイークがやってきた。昔だったら、海外旅行にでも行っていたであろうところだろうが、歳を取り過ぎ、体力が衰え、足が悪くなっては、最早、海外どころか近くの散歩さえ、以前いつも行っていた所へも行けなくなり、行動範囲がずっと狭まってしまった。

 それでも、暖かい季節のゴールデンウイークで、天気も良くなり、旅行ラッシュのテレビなどを見ると、もうどうにも家の中にばかり閉じこもってはいられない。三輪の歩行補助器を使って、昨年までは朝早くからよく行っていた近くの川の河川敷の公園まで行ってみた。

 以前はこの季節になると、毎年、川を横切って多数の鯉のぼりが空に舞っていたものだったが、コロナ流行以来姿を消してしまった。それでも季節が良くなると、近年は河川敷に自家用の小さなテントを張って楽しむ人が見られるようになったので、今年はどうだろうかと思いながら現地に着いた。

 驚いたことに、今年の河原はなんと大勢に人たちで賑わっていたことであろうか。川の流れに沿ったさして大きくもない公園であるが。そこにぎっしりと言って良いぐらい、色々なテントが少なくとも二十以上は張られ 大勢の人たちで賑わっていた。

 地域の集まりなのであろうか、大勢の家族連れが一角を占拠し、一緒に飲んだり食ったりしながら、その一角では、愛玩犬を走らせたり、家族ぐるみの走り合いの競争をしたりして盛り上がっていた。

 それに続いては、小さな色々な家族用のテントが所狭しと並び、それぞれに人たちが動いていたが、まさに川に沿った過密なテント村とも言える状態であった。 川筋がいっぱいなので、少し離れたところにテントを張る人もいたし、鉄道橋の下の日陰に集まり、シートを広げて皆でバーベキュウをやっているグループもいた。

 そこへ近くのコンビニに買い出しに行っていたのであろう人が、ビニールの袋をぶら下げて堤防の階段を降りてくる姿も見られた。

 堤防の上の遊歩道では親子で自転車を楽しむ家族もいたし、高速道路の日陰になって目立たなかったが、堤防の外側の公園でも、遊具で遊ぶ子供や、ベンチで休息を取る人たちも見られた。いつも静かな河川敷の公園もこの日は思わぬ賑わいを示していた。

 日本経済の低迷で一部の人たちを除けば、物価は上がるのに給与は上がらず、その上円安で生活は一向に良くならない。多くの庶民は、折角の連休でも遠くへは行けず、せめて近くで楽しもうという人が多いのであろうか。それで、こんな場末の公園も人に溢れているのであろうか。

 あんなに過密な所で、わざわざテントを拡げるのなら、家でゆっくりしていたらと思わないでもないが、やはり過密な住宅環境の中では、せめて休日ぐらいは非日常を求めたいところだが、そうかと言っても遠くにも行けないので、過密でもせめて広々とした大空の下でのびのびして見たいのであろう。

 最近の都会の庶民の住宅は何処も狭い敷地に精一杯建てられた家ばかりで、窓を開ければ隣と見え見えになるので、大きな開口部といえば玄関ぐらいで、あとは何処も人一人出入りできないような狭い窓の家ばかりが増えている。

 昔ながらの大きな開口部のある家も道路に面した所など、シャッターを下ろしたままにしている家も多い。昔のように縁側から庭を眺められるような家はなくなった。気候が良くても、窓を開ければ、隣家からも通りからも丸見えなので、ゆっくり寛げない。

 こうした住宅事情も、混雑していても、河川敷にテントを張って、せめて外気を吸ってのびのびとして、非日常を味わいたくさせるのであろうか。

 公園はバーベキュー禁止と書かれているが、あちでもこちでやっている。後片付けさえちゃんとやって貰えれば良いのではなかろうか。せめてゴールデンウイークの時ぐらい、旅行にも行けなかった庶民たちも、オープンな河原で少しは英気を養わせてもらっても良いのではなかろうか。