一人暮らし

 もうだいぶ以前のことだが、小学校の同窓会に出た時、親しかった旧家の友達が、本人を中心に二十人ばかりの子や孫の一族に囲まれた写真を見せてくれたことがあった。昔であれば80歳も超えた老人の自慢の写真といったところであろうが、今でもこんな大家族があるのだなあと羨ましく思ったものであったが、それがおそらく昔からの大家族を見た最後ぐらいで、最早、今ではそんな大家族はもう過ぎ去った過去へのノスタルジアに過ぎない。

 それどころか、少子高齢化の今では、我が国の2020年の統計で、一人暮らしの人が2,115万人(16.8%)で、単身世帯は実に38.1%だそうである。しかもこうした単身の人たちの高齢化も著しい。退職して僅かな年金だけが頼りの一人暮らしの人達が多くなっているのだそうである。

 最近では結婚しない人が増え、その上離婚する人も多くなっている。子供も少ない。高齢未婚化が進んでおり、生涯未婚率、五十歳以上の単身者は1990年台からどんどん増えていると言われる。今や昔と違い、周囲を見ても、ついに結婚せずに歳をとってしまった人や、離婚して一人暮らしの人などの具体例をすぐにでもいくつも挙げることが出来る。

  2020年の統計であるが、70代の一人暮らしは、1985年には未婚者が5%だったのが、2020年には34.2%と増えている。因みに、死別で一人暮らしになった者は1985年に69.9%、2020年は30%であったそうである。

 こういう子供のいない一人暮らしの老人が多くなっているのが現在の老人社会の一つの特徴であり、こうした身寄りのない一人暮らしの老人の貧困が問題となっている。肉親にも見放されてというのではなく、身寄りのない孤独な老人の生活や福祉をどうするかがこれからの大きな問題であろう。

 困るのは貧困でなくとも、世間から隔離された一人暮らしの老人が介護が必要になっても申請できるかどうかが問題だし、認知症で行方不明になっても、家族がいなければ身元の調べようもなくなる。病気しても介護の手は届きにくいだろうし、死んでも誰も知らずに放置されかねない。

 今後の大きな老人福祉の問題であろう。