スーパー前の広場

 先日、散歩の後スーパーに寄ったが、その日は割引の日だとかで混んでいるというので、トライウオーカーを使っているので、混雑の邪魔になるのではないかと思い、女房が買い物をしている間、駅前にあるスーパーの前の広場で待っていることにした。

 待っている間に駅のガード下の店を覗いたりもしたが、時間があるので広場の片角にある座り心地の良さそうな杭の様なものに尻を下ろして待っていた。暇なので、見るとはなしに、スーパーに出入りする人や、近くを行き交う人々をそれとなく観察していると結構楽しかった。

 先ずは、スーパーから出てきたお爺さんが、そこそこ腰も曲がり、買い物袋を片手に持ってヨタヨタ歩いて来るが、杖もついていない。今にも転倒するのではないかと心配するぐらいなのに杖を持っていない。

 先日は家の近くで、こちらは老婆で、先のお爺さん以上に腰が曲がっているのに、両手に買い物袋をぶら下げ、それこそ地を這わんばかりの格好で歩いていたので、女房が「持ちましょうか」と声をかけたが「近くですので」と断られたことがあった。

 どうも歳を取り足が弱っても、杖を持ちたがらない老人がいる様である。死んだ弟もそうだったし、昔の知人で家を出て角を曲がってからしか、折りたたみ式の杖を出さなかった人もいた。また、先日はトライウオーカーで歩いていると、ヨタヨタと寄ってきて「医者に歩行器を使ったら」と薦められているのだがと、尋ねてきた老人もいた。

 自分の実態を理解して素直についなり歩行器なりを利用した方が自分のためにも周りの人のためにおなっろうと思うのだが、本人に任せるよりしかあるまい。

 そんなことを考えながら見ていると、今度はスーパーから出てきた老婆が荷物を持ちながら迎えの人でも待つのか、じっと立っている。この人も腰が曲がっている。いつまでもじっと立っているので、「座られたら」と声をかけたくなったが、腰を下ろせる所は私の座っている杭の様なところしかないので見合わせた。

 すると今度は、自転車で前後に子供を乗せて広場を勢いよく横切って行く女性が目の前を通って行った。広場の外は車も多いし、結構混雑しているのに平気でうまく通り抜けていった。毎日のことで慣れたものなのだろうが、車も結構走っているし、事故など心配しないのだろうかとこちらが不安になった。

 と思ったら今度は白いワイシャツにネクタイを結んだ若者が携帯を見ながら道路から広場に入って来た。見るからに若いビジネスマンである。しきりに駅の入り口の方ばかり気にしているので、どうも仕事で誰かを迎えに来た様であった。なかなか目的の人が来ないので、多少イライラしているようだった。暫くするとしびれを切らして、駅の出入り口の階段の下まで行った。

 暫くすると、階段の下で頭を何度か下げるのが見え、やがて中年のビジネスマンを案内しながら広場の方に戻って来た。どこの会社に行くのかなと思って後を追うと、広場の後方に車が停めてあり、それに乗り込んだので、駅まで迎えに来たがなかなか現れないのでイライラしていたものの様であった。

 その間も駅と広場の間の狭い通路を何台もの大きな車が通り抜けて行った。その間を大勢の人たちがスーパーから出たり入ったりし、駅の出口の方への人の流れもも絶えることはなかった。

 こうして横から人々の動きを見ていると、いつまでも飽きないものである。昔から他人を観察するのは好きだったが、やっぱり人間観察は興味深いものである。そのうちに女房が出て来たので、一緒に家まで帰ることとなった。