よう言うわ

 ウクライナキエフ周辺からロシアが撤退した後に四百人もの死体が残されていた。アメリカを初め西側諸国は戦争犯罪だ、徹底的に調査して犯罪行為を明らかにすべきだと言い、ロシア側はウクライナのでっち上げだと言っている。

 武力による戦争であるから、当然、住んでいる住民も巻き込まれるし、残虐行為も伴うであろう。戦争そのものが犯罪行為であり、その中では、残虐行為も当然伴うのが普通であろうから、個々の例については、その判断は難しいことが多いであろう。

 侵略行為自体を非難すべきであり、少なくとも過去の戦争についてのように、個々の例について勝者が敗者を裁くようなことはフェアーではない。朝日新聞によれば、バイデン大統領は4月4日、ロシアのプーチン大統領について「我々はブチャで起きたことを見た。彼は戦争犯罪人だ」と語り、追加制裁への意向を示したという。経済制裁普通の国民を困らせるだけでなく、西欧側を含め世界的にも経済の混乱を招くのであまり奨められない。

 それはともかくとして、アメリカの大統領が毎日にようにテレビに出てきて、正義の味方と言わんばかりに「侵略はけしからん、残虐行為を処罰しろ。プーチンは犯罪者だ」と繰り返しているのを聞くと、「よく言うわ、自分のことは棚に上げて」と言いたくなる。

 今度はアメリカは戦争をしていないので、戦争をしかけた者を思う存分非難できる。それに懲罰を加えて、恐怖を煽るほど武器が売れて儲かるのである。この絶好な立場を利用しない手はないと言わんばかりである。

 第二次世界大戦が終わってからこれまでの間にあった、武力による他国への攻撃や侵略の殆どはアメリカのよるものであったではないか。朝鮮戦争ベトナム戦争に始まり、中南米諸国への侵略、中近東や北アフリカでの数々の紛争、中近東の戦い、イラクアフガニスタンへの侵略などキリがない。その間の残虐行為についても多くのことが報道されてきた。

 ベトナム戦争での某村での住民の虐殺事件、キューバグアンタナモ基地での捕虜に対する拷問、誤ったイラク戦争や、リビアかどこかの大統領の殺害、他国領土へ侵入してのビンラディンの殺害、その他、数々のでっち上げや残虐行為が繰り返されて来た歴史など全くなかったかのような態度である。

 最後のアフガニスタンから撤退したのは、まだほんのすぐ前のことではないか。それを思うとどうしても「自分のことを棚に上げて、その反省もなく、よくも言えたものだと言いたくなるのも納得してもらえるであろう。大声でロシアを非難するにあたっては、自分達の過去も省みて、世界の平和への解決の道を真摯に探究するべきであろう。

 戦争は犯罪である。いかなる理由があるにしろ、外交的な取引で解決すべきであり、武力に訴えるべきではない。今や世界の経済や社会、その間の情報も密に結びつき、一体化しつつある。そこに核や生物化学兵器など、世界を滅亡させ得る大量破壊武器の存在を考えれば、人類は、その将来を考え、問題を戦争で解決しようとする思考とはキッパリと縁を切るべきであろう。

 付け加えるならば、この大規模な経済制裁は相手を困らせるだけでなく、制裁を強制された西側諸国にも跳ね返って来るので、末はアメリカの一極支配体制をも揺るがせ、アメリカの没落にも繋がりかねない危険さえ孕んでいることも知っておくべきであろう。