劣化したのか日本政府

 最近の日本の凋落ぶりは見るのも嫌なぐらいである。

 あの惨めな敗戦の後、日本中に焼けのが原が広がり、闇市、飢えと貧困、三等国だの、日本人は12歳だなどと馬鹿にされ、もう日本もおしまいかとまで思われかけたが、アメリカ追随のおかげ(?)で、朝鮮戦争ベトナム戦争のおこぼれ頂戴を契機に、驚くほどの復興をを果たし、ついにはJapan as No.1 ! 「国民総中流」などと言われるまでに復興したが、出る杭は打たれる。アメリカの従属国の必然で、その後はアメリカに色々と抑えられて、もう長らく停滞が続き、最早新興国にも押され、世界のトップクラスからずり落ちかけている。

 それにもかかわらず、かっての栄光が未だに続いているかのような錯覚に囚われ、世界の変化にも鈍感で、一貫してアメリカ追随を続け、そのおこぼれに預かるためには、アメリカの無理難題には憲法を無視してまで答え、国民の保護や利益よりも、アメリカ優先の政治を続けて来たが、アメリカ追随一筋の矛盾が次第に大きくなり、先行きの不安を募らせている。

 殊に、安倍首相の時代以降、その傾向が強くなり、日本の憲法は有名無実になりかねないまで無視され、国民の福祉は後回しに、沖縄に辺野古基地建設が象徴するように、矛盾の激しくなった中で、更にアメリカ中枢の世界支配の尖兵として、その要求に振り回されつつある。

 安倍首相のトランプ大統領へのポチのような追随、「こんな人たちに負けてはならない」という国民への恫喝、憲法無視、自己都合の政府機構や政策や法解釈の変更など、政治の乱れが常態化してきた。その現れが森友加計問題、桜を見る会、警察のトップ人事問題、統一教会問題などとなったが、いずれも安倍首相が辞め、殺された後も有耶無耶になり、政府はそのまま乗り切ろうとしている。

 しかも後を継いだ岸田首相は、聞く耳を持っていると言いながら、国民の要望を無視して、アメリカに言われるままに国民には何ら説明もせず、予算の裏付けもないままに、突然の軍事費のめちゃな増額をし、軍隊を持たない日本が遙かな遠方からでも敵基地を先制攻撃出来る武器を買わされ、それを急速に配置しつつある。現在そのような緊急事態が発生しているとは思えない時期にである。作られた危機に乗じた武器商人への対応としか思えない。

 それと対照的に国内では、これこそ重大な人口減少、少子対策には予算がないので、後回しにされてしまっているのは、どう見ても、政府の本末転倒の政治と言わねばならない。更には、マイナーカードの欠陥が次々に暴露されても、一旦決めたものはあくまで固守しようとして、国民の不安、不信に応えようとしない頑迷さもあからさまになっている。

 そんな中で行われた広島サミットでは、折角 G7の首脳が広島に集った機会であったにも関わらず、広島の人たちの心からなる核兵器廃止の希望を裏切り、世界の核拡散反対の声をも無視して、核の抑止力を認めるというアメリカの方針にただ追随しかない無様さを世界に露呈し、国民の切なる願いには一顧だにしなかった。

 これらの傾向は沖縄の辺野古埋立続行で象徴される、戦後揺れることなく続いてきたアメリカ追随が何より優先され、国民への政策は後廻しという、戦後の一貫した政府の政策が未だに寸分も動かぬ方針であることと同根である。

 このままアメリカ追随を続けるならば、米中対立が強くなる中、アメリカの尖兵として、対中国の台湾を巡るアメリカの代理戦争をさせられかねない危険が非常に高くなり、罷り間違えれば、日本は再び破滅を繰り返さないとも限らない。

 更には、最近の福島原発汚染水海洋放出問題を取り上げても、折角長い時間があったのに有効に活用することもなく、関係諸国への説明不十分なまま、海洋投棄という乱暴な行為に出てしまっているのも明らかに誤りである。何でもアメリカの了解さえあれば、近隣諸国など他の国についてはそれ以上に大きな問題はないとするような、傲慢で不注意な政府の態度と言わざるを得ない。

 国内の漁業者の同意さえ取れないで、どうして外国が納得すると思ったのか不思議なぐらいである。世界の共通の海へ自己都合の廃棄物を流すのである。原発の汚染水の処理にはこれまで随分長い時間もあったのである。当然その間に国内、国外ともに、最善の方法を選び、十分な説明で納得してもらうことが出来たはずである。日本外交の失策以外の何ものでもない。

 日本政府は科学的に問題がないと主張するが、処理した汚染水に問題が残っていないわけではない。汚染水を処理水と言い、トリチウム以外の放射性物質がゼロではないことには触れず、濃度ばかりでなく、30年にも及ぶ放出の総量や、トリチウムの運命についての未知の部分についてや、放出される処理水の総量の地球環境への影響などに対する対処法などについても、近隣諸国に納得してもらうだけの説明が不十分だったのではなかろうか。単にトリチウムの濃度などの数字だけの問題ではないのである。

 トリチウムだけのように言ったり、処理水といったりして誤魔化そうとしないで、他の放射性物質も含み、ALPSの具合によっては危険も考えれれるので、パイプからの放出に安全設備もつけられ、チェックもするようになっているなど、事実を懇切丁寧に説明する責任を果たすべきである。

 今やごまかしでなく、事実を詳細に説明することが求められているのである。周辺諸国の納得もえないで、一方的に処理水を海洋に放出し続けるのは、国民としても恥ずかしい。

 誤魔化しと言えば、関東大震災に絡む朝鮮人虐殺の事件についても、これだけ事実が語られ,政府関係の文書さえ存在するのに、国会で複数の大臣が「事実関係を確認することのできる記録が見当たらない」と述べ、調査の必要性も否定している。ここまでして誤魔化そうとする態度はあまりいも情けない。

 ここらで長年続けられてきたアメリカ従属だけを考えずに、もう少し自律的に、独立国家として日本の周辺国や、その多くの人たちの生活をも真摯に考慮し、戦争の準備よりも、友好関係を強めるべきであろう。