説明しない政府

 政治は言葉で行われるものである。政府は何をするにしろ、もっと国民に説明すべきであろう。菅首相は就任早々国民に「自助、共助、公助」を説いただけで、その後は、学術会議議員任命問題については、6名を拒否した理由について何も語らず、また最近では、このコロナが猖獗して、緊急事態宣言さえ出ているのに、どうしてオリンピックを強行しなければならないのかについいても、国民に説明しようとしない。

 原発事故による大量に溜まった汚染水の処理水の海への放出も、地域の漁業者との約束を破ってまで決めても何も言わないし、原発の再稼働についても、何も言わないままに推し進めていっている。4人の大臣が汚職に関連して議員を辞職しても知らん顔である。

 コロナ下でのオリンピック開催については、今なお緊急事態宣言が続いている中で、国民の多くが心配し、世論の反対も明らかで、しかも、政府の諮問専門委員会までが危険を予測しているのに、なお強引に進めようとしながら、国民に対しては何らの的確な説明もない。

「世界最大の平和の祭典であり、国際的な相互理解や友好関係を増進させるものだ。安全、安心な大会を実現することにより、希望と勇気を世界中にお届けできるものと考えている」 と原稿を読んでも、専門家が口を揃えて警鐘を鳴らしているのに、どうすれば安全安心な大会になるのかの説明もないままに、このままオリンピックを強行しようとしている。

 それも既に、昨年の第2波の時に、GoTo政策の失敗で、折角終焉しかかっていた流行を再燃させてしまった失敗があるにもかかわらず、今また専門家の意見に反して、再び同じような過ちを繰り返そうとしているのである。

 オリンピックの開催はIOCがするものだと言うのは責任逃れとしか聞こえない。国民の健康や命がかかっているのである。よくても悪くても責任は政府が取らねばならない問題である。IOCのバッハ会長や、他の幹部からの「菅首相が止めると言っても、ハルマゲドンでも起こらない限り開催される」などとの発言から見て、IOCとの関係もあるのであろうが、国家の主権を犯すような発言に対して、抗議一つ言えずに、黙ってそれに従っていると言われても仕方がないであろう。

 首相の記者会見を見ても、予め用意された原稿を読むだけで、記者たちの質問にまともに答えようとしない。これでは首相の支持率が下がるのも当然であろう。このままオリンピックが強行されるなら、コロナの災害が何処まで広がるのか空恐ろしい。世界中でワクチン接種が進み始め、コロナ後の世界が見え始めてきている国もある。

 ここで再び失敗を繰り返せば、コロナで国民に多くの犠牲を払わすだけでなく、経済的な発展においても、この国が取り残されてしまうことになりかねないのを恐れる。多くの国民の心配をよそに、専門家の警鐘にも耳を貸さず、以前の失敗をも顧みず、それでも強行して成功する見込みがあるのであろうか。いずれにしろ総理大臣は主権者である国民にはっきり説明すべきである。