国際的嫌がらせ

 米国は今冬に北京で行われる冬季オリンピックに政府関係者の派遣を止めるが、選手団は送ると決めたそうである。イギリスやカナダ、オーストラリアなどもそれに追随したらしいが、フランスは同調しないようである。

 新疆ウイグル地区での人権抑圧などに対する抗議のためらしいが、中国は否定していることであるし、政治的な思惑が絡むので、どこまでが事実かわからない。事実だったとしても、中国の国内問題であり、抗議はこれまでに既にしてきたことであり、オリンピックを政治に結びつけることは問題でもある。それに、政府関係者派遣は中止するが、選手は送るという中途半端なものであり、嫌がらせとしか考えられないような決定である。

 米国がこういう反応を見せるのは米国の問題だから兎角いうことではないかも知れないが、米国が決めたからと言って、日本までが何でもそれに従う必要はないのではなかろうか。韓国は中国との関係も重視して反対している。

 日本とアメリカでは対中関係は同じではない。日本でもウイグルの人権問題は取り上げられて来たが、それとオリンピックは別の問題であり、中国は日本の貿易総額の4分の1を占める最大に貿易相手国であるばかりでなく、3万社を超える日系企業もあり、約11万人の日本人もいる。尖閣問題などがあるにしても、現実に中国が日本に実質的な損害を与えているようなこともない。

 何と言っても、中国はすぐ隣の大国であり、歴史的な関係もどこよりも強く長いし、貿易額から言っても世界一であり、コロナ前のインバウンドだけ見ても、その関係の大きさがわかる。来年は日中国交回復50周年にもあたり、今や中国なしに日本の存在さえ考えられないぐらいの関係にある。

 それにもかかわらず、岸田首相は米国の発表があってから我が国の判断で決めると言いながら、結局は米国に追随して日本も政府関係者の派遣を取りやめ、JO Cの山下会長と橋本オリンピック委員長を送ることにしたらしい。中郷区の配慮ものぞかせて、アメリカに同調したことになる。

 米中関係が険悪になるにつけ、国民の中でも反中、嫌中の雰囲気が醸成されてきているようだが、どこまでアメリカに追随するつもりであろうか。遠いアメリカと違って、隣同士の日中の関係は歴史的にもアメリカよりもはるかに深く、この隣国を無視して将来の日本は考えられないのではなかろうか。先の大戦でも、あれだけ深く攻め入っても勝てなかった大国である。

 米中の関係が悪くなればなるほど、日本は毅然とした態度で、自己の立場を主張し、守っていかねば、将来的には日本はアメリカにも中国にも相手にされなくなり、昔言われた東洋の孤児ではなく、今度は世界の孤児にさえなりかねないであろう。

 日米安保条約地位協定による日本のアメリカに対する弱い立場はわかるが、それにしても、日本の将来を考えれば、政府はどこまでもアメリカ一辺倒の追随を止めて、極力中立を守り、アメリカと中国の中を取り持つぐらいの働きを考えるべきではなかろうか。

 世界は急速に変わりつつある。アメリカの嫌がらせに加担することなく、中立の態度を取るのが日本の国の将来のために最善の道だと思うがどうだろうか。