原発の処理水放出はやり直すべきだ

 福島原発事故による処理汚染水の海洋放出について、日本政府はどうして全魚連などに対して理解し納得してもらう十分な努力をしてこなかったのであろうか。風評被害の補償さえすれば良いというものではない。

 先に書いたように、全漁連などの漁業者とは「関係者の理解が得られなければ海洋放出はしない」と文書による約束をしながら、一方的に「一定の理解が得られた」として、漁業者の反対を押し切って放出を始めたことは、あまりにも強引な一方的な約束違反である。

 時間もたっぷりあったわけだし、漁業者の納得がいく説明をして、漁業者の同意を得てから放出するのが当然の道ではないか。自国の魚業者にさえ納得がいかないままの放出は、近隣諸国の反発を買うのは当然であろう。中国や韓国、それに太平洋諸国にどれだけ懇切丁寧な説明をして同意をうる努力をしてきたのであろうか。

地震によるとはいえ、我が国の原発事故の処理のために、世界共通の太平洋に処理した汚染水を流すのである。近隣諸国のみならず関係諸国へ十分な説明をして納得して貰ってから行うことが当然の方法であろう。IAEAのお墨付きを貰ったからそれで良いというものではないだろう。

 世界の共通の海へ処理済みとはいえ、原発事故による汚染水を流すのである。十分に丁寧な説明をして納得して貰った上で放出するのが当然であろう。科学的に問題がないならないと説明して納得してもらう時間も十分あったはずである。

 いくら科学的に許容出来るといっても、自国の漁業者さえ説得出来ていないことを、利害関係を伴う近隣国に相談もなく一方的に放出するのでは、理解が得られないのは当然ともいえよう。

 太平洋は人類共通の財産である。世界の環境にも関することである。科学的に許容できる範囲であるにしても、地球環境に影響を与える行為であることには間違いない。問題にならない濃度の処理水と言っても、残存放射性物質はゼロではないし、トリチウムの運命、水素イオンの代わりに有機物に取り込まれたトリチウムをめぐる物質代謝など未知の部分も少なくない。

 それに、放出される量が微量であっても、長年に渡り放出された場合の総量なども問題になりかねない。共通の財産である海洋への放射性物質の放流である。関係する国や地方、人々の了解なしの放出はやはり問題である。放出の前に長い時間もあったことである。何故これまで関係ある国や地方、人々に納得して貰う努力をしてこなかったのであろうか。

 先ずは日本の漁業者が納得するまで丁寧な説明を繰り返すべきであろう。ついで近隣諸国や太平洋の関連した諸国の理解をうるまで、懇切丁寧な説明をするべきであろう。もう既に放出を開始しているようだが、最善は一度中止して、同意をうるまで延期するのがベストであろうが、それが出来なくとも、急いで反対に対する非難でなく、十分な説明を繰り返し、納得して同意して貰うための努力をすべきではなかろうか。