ミミズの地獄

 いつだったか舗装された郊外の道を歩いていたら、アスファルトの路面に何匹とも知れない多数のミミズがそこらに散らばって死んでいるのを見たことがあった。その時は、ミミズの世界に何事が起こったのだろうと不思議に思いながらも、深く考えることもなく、何か異変があったのだろうかと、気持ち悪い感じがして、踏ん付けないように注意しながら、そこを避けて通り過ぎてしまっただけであった。

 ところが、最近 暑いので、朝早く川べりの舗装された遊歩道のようなところを歩いていると、いつものように、あちこちで、ミミズがアスファルトの上で、干上がって死んでいるのを見ることが多くなった。

 舗装道路の両側は草むらなので、当然ミミズがいてもおかしくないが、わざわざ舗装してある道の真ん中にで出てきて、多くのミミズが死んでいるのはどうしたことかと気になる。

 川べりの道なので、川の水量などによって、ミミズの住む地下の環境も激しく変化を繰り返していることであろう。昔から雨が降るとミミズが出てくると言われているので、雨のために地下の環境が変化すると、新たな環境を求めて地上へ出てきて、移動を始めたものの、アスファルト道路とは知らずに、どこかでまた地下へ潜ろうとするが、アスファルトでは硬くて潜れない。もう少し先へ行って潜ろうとしても、どこまで行っても潜れない。

 その内に陽がさしてくるし、アスファルト道は温度も高くなり、とうとうもがき続けても、地下へ潜る所を見つけられずに、乾涸びたアスファルト上の乾燥と高温に耐えきれず、悶え死んでしまったものであろうか。

 少なくとも二メートルも三メートルもある幅のアスファルト道では、ミミズにとっては、それを渡り切るには、人で言えば、1里も2里も歩かねばならないようなものであろう。人間は自分らに都合の良いように好きなようにアスファルト道路を作るが、ミミズにとってはそれを横断するのは大変なことであろう。

 人間様には気が付いていないのであろうが、アスファルト道さえなければ、何処かですぐにでもまた地下へ潜る場所を見つけられたのに、アスファルト道はミミズにとっては命を奪う地獄なのである。ミミズにとっても決してあのような無様な死に姿を見せたくないに違いなかろう。

 ミミズは土を食べてその中の養分を摂り、残りを排泄することにより、土壌を攪拌し改良し、自然の生態系の中で重要な役割を果たしていると言われている。ミミズの生態まで考えて道路を造る人はいないだろうが、こんな所でも、人間による開発が生態系に影響を及ぼしているのだということにも一顧してみてはどうだろうか。