路傍の草花

 足が悪くなり仕事を辞めたところで、コロナが流行って、遠くへ行く機会が減り、足の訓練のこともあるので、もっぱら近くを散歩する機会が多くなったこの2〜3年である。

 以前に仕事で市内を歩いていた時には、仕事の予定もあり目的地に向かって急ぐので、歩いていても周囲の景色に注意を払う機会も少なかった。

 ところがもっぱら家の近くを散策する様になると、急ぐ用もないし、足が悪いのでゆっくりとしか歩けない。所々で一服もしなければならない。自然に周りの景色をゆっくり眺める機会が増えた。

 それに、市内と違い、山あり川あり、森もあれば田畑もあるし池もある。神社やお寺もあるし、お城や古墳もある。いろいろな眺望も楽しめる。ゆっくり歩くと、自然と路傍の草や木も目に入る。つい足を止めて眺めることにもなる。

 今まであまり気にも留めていなかった場所に思わぬ花が咲いていたりして、ついその花の名前まで調べたりすることにもなる。街路樹などでも、トキワマンサクサンシュユビョウヤナギアオダモなど散歩の途中で見て覚えたが、年のせいか、すぐに忘れて「あれなんだっけなあ」と女房に聞かなければならないのが残念である。

 昨年は近所の家の垣根に美しく咲いていたモッコウバラを知って、花屋さんに行って苗を求め庭に植えた。今年はまだ小さく、少し花が咲いただけであったが、将来が楽しみである。

 最近覚えたものの一つはヒルサキツキミソウがある。よく散歩する川の堤防の遊歩道の端の舗装部分と堤のコンクリート壁との僅かな隙間から生え、可憐なピンクの花を咲かせている。こんな所からよくもこんなに沢山生えたものだなと感心させられる様な生命力を持った草花である。それが何メートルにもわたって並んでピンクの花を咲かせてているのである。

 昨年、あまり可愛いので、2−3本引き抜いて家に持って帰ったが、今年は我が家でも咲いている。元の堤防のそれらも、今年は去年よりも勢いを増し、長さも長く続き、堤防の道の反対側にまで広がって咲いている。

 これまで名前も知らなかったが、娘が調べてくれて、ヒルサキ月見草ということがわかった。外来種で、またの名をピンクレディとも言うそうである。(上図参照)

 また我が家の2〜3軒先の家が、昨年春頃から空き家になったままであるが、こちらにも、その家の前の道路脇の舗装と塀の敷石との僅かな線状の隙間から、草が生えて成長してきていたが、春の季節とともに成長し、仲間も増やして、今ではずらりと並んで花を咲かせている。

 これはどうもハルジオン、ヒメジオンの類の様である。この二つはよくある外来種の雑草の様だが、同じ頃に咲き、よく似ているので「ハルジオンとヒメジオンの見分け方」などがグーグルの図鑑などにも載っている。

 ハルジオンの方が少し早く咲くが、こちらの方が菊の様な花弁の数が細くて多く、少し上向きになっており、茎が中空で、葉の付け根が茎を 少しつ包み込む様になっているとか書いてあるが、それを当てはめてみると、どうやらこれはハルジオンではなくて、ヒメジオンのようである。こちらの方が長く咲いている様である。 

 歳と足とコロナのために、繁華な街や遠方には行けなくなったが、近くを散策する機会が増えたお蔭で、自然に親しみ、木や草の花を眺める楽しみが出来たことを感謝せねばなるまい。

 追記: こんなことを書いた後、今朝猪名川の堤を散歩すると、もう6月の半ばなので、ヒメジオンであろうが、堤防に沿って、これまでになく勢いを増して、ずらりと並んで何処までもというほど続いていた。小さな花で目立たないが、これだけ揃うと結構美しい。