雪よ 雪よ この冬の雪は?

 今年は年末になって、テレビは「数年に一度の寒気がやって来て大雪が降るので警戒して下さい」と仕切りに言うようになった。

 昔は新潟や秋田などの日本海側では、毎冬大雪で、冬中雪に閉ざされて、雪が深いので二階から出入りしなければならないなどと言われていた。病人でもで出れば、それこそ大変で、病人を戸板に乗せて、若者たちがそれを担いで山を越えて運んだものだというような話もよく聞かされたものであった。

 近年は道路も整備され、交通が発達したので、そのようなことはないが、それでも高齢化社会になった雪国では除雪するだけでも大変だし、屋根の雪下ろしなどで毎年何人かの犠牲者さえ出ている。

 そう言った雪国の暮らしの大変なことは分かっているが、雪の少ない大阪に住んでいると、毎冬雪は待ち遠しいものである。炬燵に入りながら、窓の外の雪景色を眺めて一杯やるというのに郷愁のようなものを感じるのは私だけではないであろう。

 毎年雪が待ち遠しいのだが、近年はすっかり雪が減ってしまった感じである。最後に我が家で雪ダルマを作ったのは、アメリカの孫がまだ幼かった頃だから、もう二十年以上も前のことになる。池田では、それ以来まとまった積雪は皆無である。

 その後一度、何年か前に朝出かける時に、同じ通りの二、三軒隣の親子が、道路のアスファルトに僅かに積もった雪をかき集めて、玄関口に小さな雪だるまを作っているのを見かけたが、夕方帰宅時にはもうすっかり溶けてなかったことがあった。それもまだ勤めに出ていた頃だから、少なくとも数年以上も前のことであろう。

 それが最後で、それ以来、毎冬一回か二回ぐらい屋根や庭木がうっすらと白く覆われるぐらいのことがあるぐらいだけとなり、昨年などは一冬を通して、一度雪がちらついただけで、とうとう雪景色を見ないまま過ぎてしまった。

 雪国の人には全く申し訳ない話だが、雪のない台湾の人たちが北海道に憧れる気持ちがよくわかるような気がする。やっぱり冬には一度や二度は雪景色を見なくてはと思うのは、雪のない世界に住む人たちの共通した憧れではなかろうか。

 そうしたところへ今回の年末の雪情報である。テレビの雪予報の地図を見、解説を聞くと池田あたりは丁度降雪地域の境界線上である。明日の朝こそ窓を開ければ銀世界かと期待して眠り、朝早くこっそり窓を開けてみたが、やっぱり今度もがっかり、はずれだった。雪の痕跡もない。

 それでもまだ諦めはしない。冬はまだ始まったばかりである。2月ごろになれば、また寒波もやってくるだろう、その時まで夢はしまっておこう。暇な老人はそんなことに一喜一憂している次第である。