「スズメの戸締り」と「君たちはどう生きるか」

 宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」と、新海誠監督の「スズメの戸締り」というアニメ映画を続けて見た。

 言うまでもなく、二人とも日本を代表するアニメ映画の作者であり、宮崎駿監督は長い間「風の中のナウシカ」「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」「風立ちぬ」など多くの作品でいろいろと楽しませてくれたが、いつだったか、もう映画はやめたと宣言していたので、これでおしまいかと思っていたら、今回どう言う経緯なのか、ひょっこり「君はどう生きるか」という昔有名だった吉野源三郎の本の表題を引っ張り出してきたアニメ映画を発表して驚かせられたのであった。

 一方新海誠監督は1973年生まれというから、1941年生まれの宮崎とは一世代違う新進気鋭とも言える作者であるが、既に、かって日本中を風靡した「君の名は」という同名映画を忘れさせてしまったような素晴らしい作品で一躍有名になり、ついで「天気の子」でも一層名を上げた作者なので、今度の「すずめの戸締り」も是非にと思って見に行ったのであった。

 「すずめの戸締り」という表題だったのでてっきり雀が出てくるのかと思ったら、主人公の名前が雀芽であったし、宮崎駿の方も、吉野現三郎の本とは直接関係はなかった。

 どちらの作品も良かったが、現代のアニメ映画の作品としては、総合的には若手に軍配が上がるのではないだろうか。というのも、アニメ映画では、画像やその展開、それに伴う俳優の声や効果音、バックの音楽などが総合して作品が出来上がるが、どうしても新海作品の方が資金も豊かだったであろうし、技術的にも最先端を行く上、現役の方が優れたスタッフや協力者にも恵まれることになる。新海作品にはそれこそ、最高の映像に、最高の声優、最高の音楽を組み込んでいるので、それにかなうものはいないと言っても良いのではなかろうか。

 しかし、全体の印象から言うと、私は宮崎監督に手を上げたくなる。こちらの方が”ダサイ?”所があるが、世代が同じこともあるのか、感性的にはこちらの方が好みに合うとでも言絵よう。宮崎駿映画のこれまで作品同様、”ダサイ?”場面が続くにしても、意表をつくような表現があったり、話の内容が豊かな点を評価したくなる。

 技術的には新海誠に手が上がるのであろうが、あまりスマート過ぎてゴチャゴチャしたところが少ない点が違うのではなかろうか。

 それにしても、どの作品にしろ、今や日本のアニメ映画は世界に誇っても良いなではなかろうか。今後どういう風に発展していくのか楽しみである。