映画「ドライブ・マイ・カー」

 カンヌ映画祭脚本賞を受賞し、世界の三大映画祭でも受賞が続く濱口竜介監督の作品。原作は村上春樹の短編集「女のいない男たち」で、179分にも及ぶ長時間のドライブ映画だが、退屈はしない。

 あらすじはこうである。車の好きな劇作家、いつも芝居のセリフのカセットを聴きながら運転するのが好み。奥さんは脚本家。奇妙な夢を見た話などをしながら二人で暮らしている。あちこち飛び回って仕事をしている間に、ある日どこか遠くの仕事に行くため、愛車で成田空港まで来たが、仕事のキャンセルのメールが入り、家に引き返す。ドアを開けて家に入ると、奥さんが若い男と性交中。その場は黙って外へ出て、車を走らせる。

 その後も家庭生活は平和に続くが、間男問題を追求する前に、奥さんがクモ膜下出血で急死してしまう。その直後に、広島の劇団に頼まれて、チエホフのワーニア伯父さんの多言語による舞台を演出をすることになり、韓国人や聾唖者などいろいろな役者を面接で選び、劇の準備を進めることになる。

 そこで劇場からの依頼で、女性の運転手がつき、以後はずっと運転を任せることになる。そのうちに主役に抜擢した若い男性が死んだ妻の崇拝者で、間男だったことが次第に明らかとなるが、その男も警察に逮捕されいなくなる。芝居を止めるか、自分が主役でするかの決断を迫られる。

 一方、運転手に採用された女性は、水商売の母親と苦しい生活をしていたところに災害が起こって家が潰れ、母を見殺しにして、一人で生きてきた女性で、車運転中に聞いたセリフから、次第に芝居にも興味を持ち、主人公とも親しくなり、決断の迫られている間に、似た境遇の二人で、北海道の運転手の旧家の跡を訪ねたりするなど、話はどこまでも続く。

 村上春樹らしい雰囲気を残しながら、それぞれの場面も良いし、全体の流れもスムースで、長い映画も退屈する間もなく、なお余韻を残しながら終わってしまうと言った感じ。浜田隆介監督の今後の発展をも期待したい。