上のいくつかの図は最近の日本の国力の国際比較の結果を表しているものである。同様な比較はまだまだあるが、どれを見てもあまり芳しいものはない。今更1990年代半ばの日本の絶頂期を思い出しても意味がない。現実はあまりにも厳しい。今や世界の中での日本はかっての日本ではない。
アメリカの従属国であることには変わりがないが、その宗主国であるアメリカが最早その力に翳りが見え、中国や他の新興国の発言力が強くなりつつあるという世界の変化が起きてきているのである。日本の先端産業がアメリカによって抑圧された歴史も忘れられない。
そういう世界の変化の中でも、日米間の安保条約をこのまま漫然といつまでも続けていても良いものであろうか。世界の潮流の変化をも読むべきであろう。アメリカは何とか中国の台頭を抑え、何とかこれまでのアメリカ中心の世界を維持したいと思っているが、客観的情勢は次第にそれを困難にしつつある。
それにもかかわらず、日本の対米従属は不変で、アメリカは対中国対策にも、日本をフルに利用しようとしている。戦後七十八年にもなるというのに、今なおアメリカ軍は日本国中を自由に飛び回っているし、必要とあらば日本のどこにでもアメリカ軍の基地を設けられる。日本政府は必死に隠そうとしているが、国民はそういう事実をはっきり知るべきである。トランプ、バイデンなどの大統領の来日時には、先ずアメリカ国内の続きである在日米軍基地へ来て、そこからからヘリコプタで東京や広島へ来ることが象徴的である。
中国はすぐ隣の大国であり、日本は経済的にも相互にどこの国より依存している。国力からして今や日本は戦争をして勝てる国ではない。中国が攻めて来ることなど考えられないのに、アメリカに言われるままに、5兆円もつぎ込んで敵基地攻撃可能な基地を南西諸島に造り、アメリカの兵器を買い、軍事費を国の総予算の2%にまで引き上げることにしている。
それだけの金があればどれだけ国民に対する施作が出来ることか。少子化対策の財源も十分賄えるし、消費税の引き下げも考えられる金額である。先端科学の研究費にも回せるし、大学の授業料を無料にすることも出来るであろう。アメリカに言われれば予算がなくても軍事費は増やすのに、国民にはあまりにも冷たい。
メデイアも政府に反対をしないし、政府に不都合なことは報道をしない、反対を言ったスタッフは下ろされる。新聞社の社長が首相や政府高官と個人的に会食するなど、日本だけではないか。森友・加計学園問題、桜を見る会、黒川検事総長問題、学術会議も問題、統一教会問題など数々の政治スキャンダルも結局うやむやに葬られたままである。
怒りを忘れた民族なのであろうか。せっかく広島でG7会合を開きながら、核拡散防止条約にも入らず、被害地広島で公然と核抑止力の必要を認めるなど、広島出身の首相が座長であるだけに余計に情けない。
経済面でも最早かっての経済先進国であった日本の姿はかすんでしまっている。人々の給料は主な外国のほとんどの国で上がっているのに、日本だけがむしろ下がっているし、一人当たりのGDPはみるも哀れで、先進国では最低、韓国にさえ負けている。非正規労働が多くなり、その日の暮らしにも困る生活困窮者が多いが、権利である生活保護の受給は困難になっている。
それにもかかわらず、国民の反対が弱いのも情けない。日本はいつからか、もうストライキのない国になってしまっている。色々な政策に反対するデモもない。フランスなどのデモを見聞きすると恥ずかしい。選挙だけが民主主義ではない。国民が自由に意見を主張できる社会が必要なのである。
国民の38%の人が、自力で生活できない人を国や政府が助ける必要はないという調査があるとか。世界最高の割合だそうである。世界で最も弱い者に対して冷酷な民族なのかも知れない。
このままで、アメリカの指示通りに軍備を増強し、台湾を巡ってアメリカの代理戦争をさせられれば、日本の国土は再びめちゃくちゃになる。アメリカに反対しなくて良い。独立して自分で判断し、行動出来るようにならねばならない。
私は最早余命いくばくもないが、自分の生まれた国が戦争に負けて悲惨な状態になったのを体験した以上、何とかこの国が世界の荒波を乗り越えて、平和な国として、発展していって欲しいものだと願わずにはおれない。