朝食は植物園のテラスで

 六月になって暑くなってくると、もう午後の散歩は続けられない。毎年この頃になると、起きがけの散歩に切り替えている。

 昼間は暑くても、早朝はまだ涼しくて気持ちが良い。4時には起きているので、早い朝食を済ませてから出かけたり、軽い朝食の弁当を作って持っていったり、あるいは、途中のコンビニでおにぎりやサンドイッチを買って持っていったりすることになる。

 朝が早いと、まだ空気は涼しいし、朝焼けで空中が赤く染まることもあるし、日の出の見られれることもある。人通りも少なく、住宅地の中では新聞配達のオートバイが走っているぐらい。大通りでも、車の交通量も少ない。たまに私らと同様の早起きの夫婦や元気な老人に出会うぐらいである。

 散歩のコースは気まぐれである。日によって、近くの猪名川の堤防を上流へ行ったり下流へ向かったり、両岸を回ったりと色々である。五月山公園から山辺の道を通ったり、山裾にあるミニ植物園のある「緑のセンター」へ行ったりする。時にはもう少し足を伸ばして、石橋の方にある水月公園や、テニス場あたりまで行くこともある。

 昨日は女房と一緒に、おにぎりを持って、池田城跡の裏の道を登って緑センターまで行き、そのテラスで朝食を取って帰った。まだ早いので誰もいない。水槽の鯉もじっとしている。テラスの椅子に座って気持ちの良い朝の空気を一杯吸い、明るさを増す空を見上げ、緑の濃くなった山や下界の街並みを見下ろしながら、ゆっくりと二人で朝飯を食べた。

 こんな時間にあたりを歩いている人は殆どいない。静かな中に小鳥の鳴き声が聞こえるだけである。途中で出会ったのは、緑のセンターへの上り道を、揃って後ろ向きになって上っている夫婦であった。おそらく健康のために亭主が言い出して、夫唱婦遵で、奥さんがそれに従って一緒に続けているのであろう。

 もう一人は、我々が食事をしている横を通り抜けて、少し離れた後方の椅子に腰を下ろした老婆ともいえる女性。やっとここまで上ってきたので、ここでしばらく休憩かと思っていると、しばらくすると一、二、三と号令をかける声がする。振り向いてみると、その女性が手を伸ばしたり、動かしたり、足を伸ばしたりと、ストレッチ運動をしているではないか。そこそこの歳のように思われたが、小柄ながらまだテキパキしていた。体操が済んだらすぐに立ち上がってさっさと帰っていった。

 私たちは食後も果物を食べたり、コーヒーを飲んだりして、少しゆっくりしてから、帰りは五月山公園の方を通って帰宅した。こんな時にも、最近使っているトライウオーカーが役に立っている。そのおかげで坂の多いこの五月山の麓を、周りの景色を見ながら疲れもしないで颯爽と歩くことができた。