遠くの親分より近くの兄貴

 昨年の9月29日は日中国交正常化50周年記念日であった。1972年の同日に田中角栄が訪中して周恩来氏総理と会談し、日中国交正常化を成し遂げ、同時に台湾と断交したのであった。

 それより半年早く、同じ1972年の2月にニクソンが訪中して上海共同コミュニケを出しているが、国交正常化は1979年のカーター政権まで待たねばならなかった。それに絡んで、アメリカの許可なく中国と国交を開いたというので、田中角栄ロッキード事件で失脚させられたとされている。

 以来50年、日中関係は、1978年には日中平和友好条約が結ばれ、1998 には日中共同宣言、さらには2008年には、戦略的互恵関係の包括的推進の日中共同声明と、友好関係を確認してきているが、それにもかかわらず、近年はこの「日中友好」の名の下に日本が中国の経済発展に協力してきた雰囲気は薄れてしまっている。

 近年は中国が経済と軍事の両面で台頭し、日本は米国と連携してどう抑止するかに腐心することになってきている。しかし、経済面では中国は今なお日本の最大の貿易相手国であり、地理的に近い中国と簡単に関係を切り離せないという難しさもある。コロナ以前の日本における最大の外来客が中国からの人たちであったことも記憶に新しい。

 中国の発展により、アメリカはその支配力を揺るがさられかねない相手と見て、香港や新疆ウイグル族問題、南シナ海台湾海峡問題で揺さ振りをかけ、ペロシ下院議長の訪台などの挑発まで行ってきており、日本にも日米同盟を通じて対中國への同調を押し付けてきている。

 それの乗せられて日本は専守防衛平和憲法さえ踏み破って、米軍に従って敵基地先制攻撃まで可能にする軍備拡張路線を始めている。それらに伴って、日本の世論調査でも、中国の印象は悪化しているし、日中友好条約で台湾を中国の一部と認めたにもかかわらず、アメリカに追随して台湾有事は日本の有事とまで言っている。

 今後ともアメリカは何かにつけ中國の発展に難をつけようとするであろうが、日本はアメリカに乗せられて最悪の場合、代理戦争までさせられることにもなりかねない。アメリカが正面切って中国と争うことになれば世界大戦、ひいては地球の破壊、人類滅亡にさえつながりかねないので、アメリカは日本をウクライナ同様に扱う恐れが十分考えられる。

 日本に中国との代理戦争をさせることである。アメリカは中国を挑発する。中国が向かってくれば、日米同盟で日本はアメリカの手先となって中国と戦わさせられる。アメリカは後方支援と言って武器弾薬などは惜しげもなく提供するが、本格的にアメリカ兵が戦うことはない。基地は利用できる時は利用できるが、いつでも放棄できる。

 日本が中国と戦って勝てるわけがないことは客観的に見ればすぐわかる。すでに歴史が教えている通りである。アメリカが遠いアジアの基地を不利になっても死守することがないことは第二次世界大戦時のフイリピンを見てもわかる。マッカアサーは I"ll return と言って一旦アメリカへ逃げ帰ったではないか。

 それに、冷静に見れば、誰にもあきらかによう、現在日本が存立をかけてまで戦わねばならない様な矛盾は中国との間に存在しないではないか。尖閣問題は局地的な国境問題に過ぎず、話し合いで解決すべき問題であろうし、あと、中国が日本へ攻めてこなければならない様な矛盾は日中間には存在しない。それどころか隣の大国と縁を切っては日本は生きていけないのではなかろうか。

 誰が考えてもわかるように、日中友好関係があり相互の交流も深く、それによる利益も大きいのに、わざわざそれを壊してまで戦う意味はどこにもない。世界の制覇を競うアメリカに乗せられることはない。アメリカは太平洋を隔てた遠い国であるが、中国は一衣帯水の隣国である。

 アメリカと中国の間を取り持つ役割を果たし、中国との友好関係を深めこそすれ、アメリカのためにそれを破壊するようなことは断じてすべきではない。

 中国はすぐ隣の兄貴分であり、アメリカは海の向かうの遠くの親分である。日本が生き残るには両者の仲を取り持ち、平和なアジアを作ることである。