杖から歩行補助器へ

 歳とともに足も弱ってきたのか、歩く速度が遅くなっただけでなく、ふらつき易くなるとともに疲れやすくなり、途中で休まなければ次第に長距離は歩きにくくなってきた。

 今年の1月には休み休み、箕面の滝まで歩いて行ったのだが、もうそれも無理ではなかろうか。そう思っていたが、先日女房について近くのスーパーへ行った時、カートを押すと案外スイスイと歩けるような気がした。これなら案外行けるかもと思い、以前に脊椎管狭窄症になった時に使って、あと放置してあった四輪歩行器を出してきて試してみることにした。

 使ってみたら杖歩行より楽で、案外長距離でも疲れないで休まずに歩けるではないか。喜んで、毎日の散歩に杖のかわりに再び歩行器を利用することにした。女房に格好が悪いなどとも言われたが、もうこの歳になれば、外見よりも実用性である。

 ただこの時求めた四輪の歩行器は、車を押す時、どうしても体が前屈みになるので、脊椎管狭窄症の時は良かったが、普通に歩く時に、上体を真っ直ぐに伸ばしたままでは足が後輪につかえ易く、歩き難い。それに前輪が小さいので、道路の僅かな段差にも引っかかるし、砂利道などではガタガタして歩くのに難儀することがある。

 何か良い工夫でもないものかと思っていたところ、どこかの老人介護関係だったかの広告か何かで、四輪ではなく、三輪で、大きいめの輪の歩行器の広告を見つけた。それには「普通の歩行器ではどうしても前屈みの姿勢になるが、これなら真っ直ぐ背を伸ばして歩ける」と書いてあり、写真まで添えてあった。なるほど三輪で後の車の間に割って入れるなら、真直ぐの姿勢でも歩きやすいだろう。

 Amazonで調べてみると確かに載っていた。広告の主は自転車製造でもしていたらしい小さな会社が、介護用の歩行器を手がけるようになったものらしい。その会社の人がたまたまチェコへ行った時に見て、あれは良いなと思って自社でも作り始めたものだという。広告はその一社の物だけであった。良さそうだが、値段も4〜5万円と書かれている。実物を見て、少しでも試してみないと、本当に使い勝手が良いかどうかわからない。

 そこで、四輪歩行器を買った近くのフランスベッドの店へ行って、そこにもしあれば試してみようと思い、出かけてみたが、そこでは扱っていないようで、カタログなども調べてくれたが三輪の歩行器は見当たらなかった。

 仕方がないので、Amazonの広告に載っている会社に電話をかけて、ショウルームのような所がないか尋ねたが、事務所だけのようで、かろうじて販売店を教えてくれた。今度はそこへ電話をしたが、実物は置いていないという。どうも小さい会社でAmazonやごく限られた所だけで販売しているようである。

 実物も見ないで嵩の大きなものを買って使い物にならなかってもつまらない。このまましばらく様子を見ようかと思ったが、たまたまAmazonの広告のなかで、偶然格安の物を見つけ、実質は他のものと同じようなので、思い切って注文した。

 二、三日のうちに大きな段ボール箱で到着したのですぐ開けてみた。トライウオーカーと名付けられているようで、これまでの四輪歩行器より一回り大きく頑丈で、その分少し重そうであった。

 早速試してみることにした。四輪車と違い、ずっと頑丈そうな感じで、車輪も一回り大きい。二つの後輪の間を広げ、両方の上についたブレーキ付きにハンドルを握って立ち、車の間に入るようにして前方に進むようになっている。成程これだと、前屈みにならなくても、真っ直ぐに立ったままで車を押すことが出来る。

 実際に歩いてみると、両手でダブルスティックを握って歩くような感じで、足が車輪につかえないし、車輪が大きいので、地面の凹凸にも引っかかり難いので歩き易い。下り坂でも、四輪車と違って進み易い。少し大きく重い感じもするが、体を預けるのだからある程度の頑丈さも必要なのであろう。

 今のところ気に入って色々試しているが、世間ではあまり見かけない。小さな四輪車を前屈みになって押している人ばかりである。このトライウオーカーなら、上体を伸ばしたまま堂々と歩ける。まだまだ知らない人が多いようである。機会があれば広く薦めたいものだと思っている。