5月13日(土)の朝刊1面トップは『マイナ保険証、別人ひも付け』『7312件誤入力、個人情報漏えい相次ぐ』『他人の証明書交付は14件』との見出しで、本文には『カードの信頼が揺らぐ形となった』とあった。
つい先日まで、マイナー・キャンペーンだといって、2万円だかのお金で釣って、多くの人たちに登録させ、元々義務でもないカードを保険証や免許証に使うことによって、半ば強制的に国民総背番号制を進めようとして来た政府には大きな痛手となったようである。
それにしても何故こんな杜撰なことが起こったのであろうか。 マイナンバーカードによる政府の狙いは、免許証から銀行口座、税務署への登録、印鑑証明など、全ての国民の情報を一括してマイナンバー一本に括り、国民の個々の情報を全て握って、あらゆる政策遂行に利用しようというものである。将来的には、例えば、このマイナンバーに基づいて徴兵が行われることも考えられる。
このような制度は当然、世界の諸国を見ても、国民の反対が多く、廃案や廃止に追い込まれた国も多いことは、上のSNSからの図を見てもわかる。そこで政府は国民総背番号制といっていたものを、多くの国民の反対を押し切って進めるために、マイナンバーカードと称し、それも義務ではなく任意だといって始めたのだが、反対も多く、いつまで経っても登録数が増えない。
業を燃やした政府は、無理やり今の健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに切り替え、カードのない者には別に証明書を出すということにして、そこから強引に制度を進めようとしたのであった。あまりにも急いで強引に進めようとした結果が今回の哀れな結果をもたらしたものである。
国民全員の生活活動などのプライバシーに関わるカード制度を構築しようというのに、この進め方はあまりにも性急で杜撰、ただ呆れるばかりである。保険証に他人の情報が紐付けされていただけでなく、印鑑証明、公金受け取り口座、住民票などでも誤りが次々と指摘されている。
ちょっとしたシステムエラーや人為的ミスで個人情報は簡単に漏洩してしまうのであり、この一連のトラブルで、この制度の危うさが返って明らかになったと言える。まさに、制度の根幹を揺るがすトラブルである。更に起きてしまったトラブル以上に、そもそもの政府の個人情報保護に対する姿勢に強い危機感を持たざるを得ない。
政府がこれを権利に群がる業者たちへの安易な下請けでやろうとした所に、事の重大性を認識しない、国民無視の政策の破綻が顔を出した結果のようである。健康保険証の制度は現在の時点で、何も特別に支障があるわけではない。マイナンバーを持たない人に対して証明書を出して迄して変更しなくても、現在のままで何ら問題がない。
政府の都合だけで、個人情報の誤りが起こる危険があるにも拘らず、強引に保険証をマイナンバーカードに置き換えようというのはあまりにも国民を無視した政府のやり方ではないか。
単に誤りをチェックしてそのまま進めるのでなく、一度取り止めて、個人情報漏洩をはじめとするセキュリティ体制への不信感の払拭を行ってから、出直すのが当然の道筋ではなかろうか。
岸田首相も「信頼というものがあってこそのマイナンバーカード」「国民がこの信頼に対して、不安を感じるような案件が指摘をされていることは重く受け止めなければいけない」とまで言わざるを得なくなったのである。ところが、そう言いながらも、政府は今の国会で強引にこのマイナンバー制度を通してしまった。
何という強引な国民を無視の進め方であろうか。先に制度を進めて後からカードの方を変更するようである。混乱が先送りされることは必定であろう。反対せざるを得ない。