台湾問題

 ロシアのウクライナへの侵攻を見て、アジアでも中国が台湾を占領しにくるのではないかと騒ぎ立てている人がいる。まるで中国が日本に攻めてくるかのような幻想を振り撒くかのようである。そのためには米国の核に依存するだけでなく、米国との共有で日本も核を持つべきだとか、せめてその議論はするべきだという物騒なことを言う人まで出てきた。

 しかし少し頭を冷やして考えればすぐわかることである。ロシアにしても核戦争を始めようとしているわけではない。人類の消滅を望む者はいない。それより、ヨーロッパとアジアでは事情が異なっている。中国が台湾に武力侵攻して来る可能性は今の所少ないし、仮にあったとしても、中国の国内問題であり、ロシアのウクライナ侵攻とは全く異なる。

 台湾は、日本が当時の清国から割譲せしめた事からでもわかるように、歴史的にも中国の一部であるし、現在は日本もアメリカも、一つの中国を認め、台湾が中国の一部であることを公認しているのである。

 それでも、中国の発展を抑えようとするアメリカの策動は、色々な口実を設けて、それに介入しようとするであろうが、アメリカが本格的に命運をかけて中国と世界大戦を戦うような可能性はまず考えられない。ありうるのは局地的な部分的介入である。

 世界滅亡にも繋がりかねない第三次世界大戦の危険を犯してまで、アメリカも中国の一部として認めている台湾を守ることなどは考えられない。ロシアのウクライナ侵略に対するアメリカの態度で見ても明らかきらかであろう。

 アメリカは戦わず、日本に戦わせて、アメリカは経済制裁や広範な宣伝活動でそれを支援するだけということになるのではなかろうか。アメリカはそれに乗じて大量に武器を売って大儲けするだけで、後は少しでも自国に有利な結末をつければよいということになるのではなかろうか。

 日本はアメリカにとっては、アジアにおける絶好な前線基地なのである。前線基地の特性は、攻撃にはフルに利用でき、不利とあらばいつでも撤退出来ることである。アメリカは中東やアフガニスタンなどでの長年の苦い戦争経験や、自国民の世論も考え、アメリカ軍の投入は最低限にし、同盟軍である実質的な傭兵の自衛隊に戦わせようとするのが常識であろう。

 アメリカ軍が最後まで踏みとどまって戦うようなことはしない。第二次世界大戦の時に、日本軍の侵攻に対してフイリピンにいたマッカーサーがあっさり本国へ引き上げて行った歴史を見てもわかるであろう。そうなると残された日本はみじめである。今の中国と戦って日本が勝てる公算はまずない。如何にアメリカと条約を結んでいても、優先するのは相手の運命よりも、条約よりも自国の安全である。

 最近の朝日新聞に『ロシアと「新冷戦」米に依存は不確実』と題して、米国政治学者イアン・ブレマー氏が書いていたが、「ウクライナの今回の事態を受けて、日本として自問自答すべきは、米国の日本に対するコミットメントが長期的にどの程度強固なものだろうかと言うことだろう。米国は政治的に分断され、機能不全に陥っている。米国に依存していると、中国に直面しているアジアの同盟国にとっても、より多くの不確実性を生み出すことになると思う」と警鐘を鳴らしている点にも注目すべきである。

 日米安保条約地位協定でのアメリカへの全面依存がいつまで安全であろうか考えてみるべき時が来ているのではなかろうか。アメリカは自国の利益によって行動するのであり、日米同盟があるからといって、あらゆる犠牲を払ってまで日本を助けるものではないことを知るべきである。そろそろ日本もここらで真の独立を果たし、自律的な道を選べるように努力を始めなければならないのではなかろうか。