台湾の有事はなぜ日本の有事なのか?

 このところ中国の発展を止めようとして中米関係が険悪になってきている。

 それに伴って沖縄や南西諸島の軍事基地化がアメリカ主導で進められ、自衛隊は敵基地攻撃能力まで持つと岸田首相も言いだし、台湾有事に備えてだとも言われており、それに関して安倍元首相は「台湾有事は日本の有事だ」などとまで言っている。

 しかし一寸考えてみよう。台湾は国連でも中国の一部として認められており、アメリカも今でも一つの中国を認めているのである。また香港やウイグルの人権問題などにしても、非難するのは当然であっても、やはり中国の国内問題である。

 中国が台湾に攻めて来るなどとの噂を言う人もいるが、現時点でその可能性はまずないという意見が大勢のようである。万一攻めて来たとしても、中国の国内問題と言わなければ仕方がないであろう。

 仮に台湾が中国に統一されたからと言っても、日本の安全が脅かされるわけではない。それなりに対処すれば、ことを荒立てなくとも日中関係は平和裡に解決出来る問題である。

 そう見てくると、現在のアメリカの対中l関係の騒ぎ方は異常である。アメリカの世界支配が揺さぶられるのを案じ、今のうちに何とか中国を抑え込もうとしているようであり、従属国の日本はその尖兵としての役割を持たされようとしているようである。

 米中関係の悪化に伴って、日本の世論調査でも中国を嫌う人が増えているようだが、中国が日本に攻めてくるような気配は今の所全くない。それより太古寄りの隣国であり、文化的、経済的な結びつきも強い。日本が中国を敵視しなければならない理由は何もない。最近の日本人の中国嫌いは、多分に、遅れた中国が日本を追い抜いて発展していくことに対するジェラシーであろうか。

 米国が進める対中敵対関係に巻き込まれてはならない。日本は中国なしでは生きていけないことを考えるべきである。緊張を高めるより、経済的関係を深め、例えば、コロナ以前のような膨大なインバウンドを再現させるなど、親善外交を進める方が遥かに有利である。

 現在のような日米関係がそのまま続けば、米中の関係が行き詰まり、最悪の事態に陥った場合には、自衛隊が米軍の指揮下に最前線で中国軍と戦わされ、アメリカは不利とあらば前線基地に過ぎない日本をいつでも捨てて、アメリカへ退却すれば良いが、日本はまともに反撃を喰らって、先の大戦以上の過滅的悲劇にみまわれることにもなりかねないことを十分考えるべきである。